佐伯泰英の「密命 第13巻 追善-密命・死の舞」を読んだ感想とあらすじ

覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

シリーズ第十三巻。

前作で金杉清之助が高野聖の一統と対決したときに得た尾張藩の年寄石河丹後守恒高が約定した書付。これによって、しっかりと尾張の弱みを握ったのが吉宗。

この書付をどう使うかは吉宗しだい。だが、いずれにしても、尾張の兄弟はうかつに動くことが出来なくなった。そうした状況での物語が本書。

だから、いつもとは状況がかなり異なるのが、本書のミソである。

早いもので米津寛兵衛が亡くなってから一周忌を迎えようとしている。題名の「追善」はこの米津寛兵衛の一周忌を追善する意味でつけられている。

修行中の清之助は修行の地で師の追善供養を行うだろう。だから、惣三郎は自らは鹿島に赴く。

その修行中の清之助は、父・惣三郎を助け、尾張との戦いに身を投じる覚悟を決めている。

いよいよ本格的に、尾張と金杉親子の戦いが幕を開ける。

清之助は、奈良に足を向け、宝蔵院流で稽古をし、柳生の庄で稽古をするなど精力的に修行を続けている。もっとも、しつこく狙う刺客が現れるのは毎度のことである。

どうも、当面尾張柳生の恨みは清之助の方へと傾きかけているようだ。

さて、今度清之助が向かう先にはどの流派があるか。そして、どんな敵が待ち受けるのだろうか。

内容/あらすじ/ネタバレ

金杉惣三郎が塩問屋赤穂屋へ掛取りにいったときのこと、遠くないところで火事が起きた。

西村桐十郎がいうには最近旗本屋敷で異変が起きているという。最近も能勢惣十郎という旗本のところで働いていた娘の遺骸に心臓に達する刺し傷があったそうだ。能勢家は火事で全焼している。

これに関連して、御目付が旗本の代替わりを極秘で調べているという。それも当主が火事で亡くなり、その跡目として縁もゆかりもない旗本の次男、三男が相続するという出来事が何件も続いているからだ。

これを惣三郎がそれとなく調べるようにと大岡忠相からの命が下った。

年が明ければ鹿島の米津寛兵衛の一周忌がやってくる。清之助は修行の途中ゆえ戻らないだろうと考え、惣三郎は自分が行くことにした。鍾馗の昇平も連れて行こうと考えていた。

この話を石見銕太郎にしたところ、石見道場からも人を出そうという。一度門弟に鹿島の技にふれさせたいという思いもあるからだ。

惣三郎が能勢家で働いていた娘の父親・千風庵を訪ねて意外なことがわかった。この時、火事で当主と嫡男もなくなっていたが、実はこの二人も斬り殺されていたというのだ。そして、この能勢家の新しい主は元長崎奉行日下部作十郎の三男達三郎博忠だという。

この話を聞いた帰り、惣三郎は刺客に狙われる。穴沢流の小佐野朔蔵道三と名乗った。

惣三郎は本格的な探索をするつもりでいた。だが上の方から横槍が入った。一体誰が横槍を入れたのだ?

そうしている中、別の火付け事件が起き、能勢家と同様に主が殺された…。

金杉清之助は熊野川を下り新宮に出て伊勢へと向かっていたが、途中で道を変え奈良に向かうことにした。近くには柳生の庄もある。その途中で不振な組に出会うが、敵なのかどうかがわからない。無視して先を急いだ。

奈良では大和街道で出会った大和屋吉兵衛と偶然再会した。清之助は大和屋の世話になり、商用で出かける大和屋にくっついて剣の聖地・柳生の庄に足を踏み入れた。

柳生家陣屋家老の小山田春右衛門重忠を始めとする柳生一門の歓迎を受けた清之助一行だった。そして、早速に清之助の技量試しが始まった。だが、清之助の腕に誰も太刀打ちできない。江戸の主・柳生俊方から知らせがあったとはいえ、信じられない面持ちであった。

凋落の激しい柳生の腕。昨日の上覧大試合では尾張柳生に大きく後塵を拝することになった。なんとしてでも柳生の技量を上げなければならない。

さっそく、一門で清之助に師事したいと申し出るが、清之助はこれを断った。代わりに、柳生での修行滞在を願い出た。清之助は柳生には自らを蘇生しようとする力があると思っていた。当人達が気づかないだけなのだと。

享保九年(一七二四)正月八日。鹿島の米津道場では賑やかに一周忌が営まれていた。

そして、惣三郎は鹿島から帰って来るなり、横槍を入れられた事件に戻った。

本書について

佐伯泰英
追善 密命・死の舞
祥伝社文庫 約三四〇頁
江戸時代

目次

序章
第一章 師走の刺客
第二章 老師の剣
第三章 飼坂峠の女
第四章 柳生籠り
第五章 相続請負人

登場人物

久米蔵…赤穂屋番頭
黒崎千代太郎…小人目付組頭
千風庵
お佳世
細川静雲忠元
久保寺三五郎…能勢家用人
市村新吾
小佐野朔蔵道三…穴沢流
五味対馬守義春…御目付評定番
戸田山城守忠真…老中
志岐根右門…戸田家中老
お円
大和屋吉兵衛
膳所茂太…奈良御奉行所
四世覚山坊胤風…宝蔵院流
夙膳…宝蔵院流師範
小山田春右衛門重忠…柳生家陣屋家老
笠間伝七郎…師範
柳生小助…尾張柳生

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