佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙 第7巻 狐火ノ杜」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

シリーズ七弾。

秋から冬にかけ、江戸の行楽を上手く物語に散りばめている。

秋といえば紅葉狩り。江戸近郊の紅葉の名所では、品川北馬場の万松山東海禅寺東叡山清水堂谷中天王寺、滝野川、高田穴八幡、大塚護国寺、品川外れの海晏寺などが人気があったようだ。

さて、前巻で今津弥吉右衛門が伊勢原におり、江戸不在の折、磐音がお店奉公の恰好で由蔵の隣に坐って、後見のまねごとをした。以来、今津屋の奉公人達は磐音を「後見」と呼ぶようになった。

そして、久方ぶりになるが、中川淳庵らを狙う裏本願寺別院奇徳寺一派が登場する。この一派の裏にいる人物・かねがふちのお屋形様。一体何者か?

おこんが磐音に気持ちを打ち明ける場面も見物。「居眠り磐音さん、もし刀を捨てて町人になるというのなら、おこんが嫁に行ってあげるわ」。これを聞いて呆然とする磐音の姿がおかしい。

第四章では貧乏御家人のやるせない生活を、同じく貧乏御家人の品川柳次郎を通して感じることができる。この柳次郎のはく科白が本当に気持ちをやるせなくする。

また、この話は上杉治憲(鷹山)の七家騒動が絡んでいる。興味のある方は上杉治憲(鷹山)を主人公とした小説を読まれると背景が明確になると思う。

上杉治憲(鷹山)を主人公とした小説
藤沢周平漆の実のみのる国」、童門冬二「小説 上杉鷹山」 など

内容/あらすじ/ネタバレ

旧暦立冬を過ぎ、坂崎磐音は品川柳次郎、中川淳庵、おこん、幸吉、おそめらと品川先の海晏寺に紅葉狩りに行くことになっていた。

海晏寺につき、紅葉狩りを楽しみ、一行は食事を取ることになった。すると、店の料理にあたったと騒ぎ出す輩がいる。直参旗本の次男、三男といった部屋住みの連中のようである。騒いで金を取ろうという魂胆である。

幸いにして医師の中川淳庵がいたので、診てあげようということになったが、もともとの魂胆が魂胆である、早々に退散していった。だが、そやつらが帰りに待ちかまえていた。

さて、今津屋に戻ると、中居半蔵から手紙が来ていた。どうやら中居半蔵は国許で孤軍奮闘しているようだ。

江戸に筑波おろしが吹く冬が到来した。竹村武左衛門が割下水の石垣工事中に怪我をした。そのため、約定の日当全部を出せないというのだ。だが、武左衛門は酒を飲んで仕事をしたようだ。

ともかく、品川柳次郎が男気を出して武左衛門のかわりをするという。磐音も付き合わされてしまう。

この肉体労働はきつかった。こうした仕事の中、加賀金沢で縁を持った鶴吉と再会する。どうやら磐音に頼みがあるらしい。だが、今はいいという。

気になった磐音は地蔵の竹蔵に頼み、鶴吉を調べてもらった。すると、鶴吉は三味芳四代目・芳造の次男坊で、評判の職人だったことがわかった。

鶴吉には兄・富太郎がいるが、鶴吉に比べて職人としての腕が落ちる。そして、兄弟でお銀という楊子屋の娘に惚れていた。だが、このお銀に絡んで小さな事件が起き、鶴吉は職人を辞めてしまったのだ。

その後、富太郎とお銀は結ばれたが、上手くいかない。やがてお銀が長太郎の妾同然になった。これを知った芳造が長太郎のところに乗り込んだが、やがて死体で発見された。これを知り、鶴吉は戻ってきたのだ。

霜月も半ば。磐音は笹塚孫一から呼ばれた。すると、通されたのは南町奉行の御用部屋で奉行の牧野大隅守成賢に引き合わされた。用事はこれよりも、先だっての賭博船に絡んだもので、磐音に二百両の褒賞が下された。

もう一つ話があった。中川淳庵の朋輩・前野良沢が襲われたという。血覚上人を頭とした裏本願寺別院奇徳寺一派である。

磐音が中川淳庵を訪ねると、このことがあり外出が出来なくて困っているという。特に隠居した岩村籐右衛門を診にいけないのが心苦しいようだ。磐音は中川淳庵に付き添う形で同行することにした。行き先は行徳である。

行徳から帰ってくると、今津屋の老分・由蔵が湯屋・能登湯が用心棒を捜しているので紹介しておいたから行きなさいという。

能登湯の主・加兵衛は二階座敷に町内の者ででもない浪人者たちがあつまりを開き、話し合っていくという。

やがてこの者達が関係する人物と、品川柳次郎が知る人物が絡み、やるせない事件へと発展していく。

磐音は由蔵とおこんの供として関八州の稲荷社の総社・王子稲荷へ行くことになった。今津屋の新しい幟を納めに行くのである。今王子稲荷では近年になく早い時期から狐火がよくでると評判である。

本書について

佐伯泰英
狐火ノ杜
居眠り磐音 江戸双紙7
双葉文庫 約三五五頁
江戸時代

目次

第一章 紅葉狩海晏寺
第二章 越中島賭博船
第三章 行徳浜雨千鳥
第四章 櫓下裾継見世
第五章 極月王子稲荷

登場人物

金森右京…旗本の子弟
田上醍三郎…旗本の子弟
小笠原総次郎…旗本の子弟
隈五郎…親方
鶴吉
富太郎…鶴吉の兄
お銀
(真中の玄五郎…香具師)
長太郎…真中の玄五郎の倅
丹下朱馬…讃岐浪人
牧野大隅守成賢…南町奉行
血覚上人
西方武助…剣客
百頭全次郎…剣客
岩村籐右衛門…隠居
加兵衛…能登湯の主
野々村仁斎
佳代
下条島次郎
おとき
根尾勘右衛門
深井市右衛門

シリーズ一覧

  1. 陽炎ノ辻
  2. 寒雷ノ坂
  3. 花芒ノ海
  4. 雪華ノ里
  5. 龍天ノ門
  6. 雨降ノ山
  7. 狐火ノ杜
  8. 朔風ノ岸
  9. 遠霞ノ峠
  10. 朝虹ノ島
  11. 無月ノ橋
  12. 探梅ノ家
  13. 残花ノ庭
  14. 夏燕ノ道
  15. 驟雨ノ町
  16. 螢火ノ宿
  17. 紅椿ノ谷
  18. 捨雛ノ川
  19. 梅雨ノ蝶
  20. 野分ノ灘
  21. 鯖雲ノ城
  22. 荒海ノ津
  23. 万両ノ雪
  24. 朧夜ノ桜
  25. 白桐ノ夢
  26. 紅花ノ邨
  27. 石榴ノ蠅
  28. 照葉ノ露
  29. 冬桜ノ雀
  30. 侘助ノ白
  31. 更衣ノ鷹上
  32. 更衣ノ鷹下
  33. 孤愁ノ春
  34. 尾張ノ夏
  35. 姥捨ノ郷
  36. 紀伊ノ変
  37. 一矢ノ秋
  38. 東雲ノ空
  39. 秋思ノ人
  40. 春霞ノ乱
  41. 散華ノ刻
  42. 木槿ノ賦
  43. 徒然ノ冬
  44. 湯島ノ罠
  45. 空蟬ノ念
  46. 弓張ノ月
  47. 失意ノ方
  48. 白鶴ノ紅
  49. 意次ノ妄
  50. 竹屋ノ渡
  51. 旅立ノ朝(完)
  52. 「居眠り磐音江戸双紙」読本
  53. 読み切り中編「跡継ぎ」
  54. 居眠り磐音江戸双紙帰着準備号
  55. 読みきり中編「橋の上」(『居眠り磐音江戸双紙』青春編)
  56. 吉田版「居眠り磐音」江戸地図磐音が歩いた江戸の町
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