佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙 第1巻 陽炎ノ辻」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

シリーズ第一巻。

坂崎磐音が豊後関前藩を出て江戸で暮らさなければならなくなった事件から物語は始まる。

居眠り磐音の異名は、磐音の師・中戸信継が磐音の剣を評した言葉である。春先の縁側で日向ぼっこをしている年寄猫のようであり、眠っているのか起きているのか、まるで手応えがない。そこから付けられた。

だが、その磐音は厳しい稽古で知られる江戸・直心影流の佐々木道場で目録が与えられようとする程の腕前。佐々木道場の目録は他道場では免許皆伝ともいわれている。

さて、今回の磐音が巻き込まれる事件。田沼意次の新貨幣政策で新たに流通することになる南鐐二朱銀に端を発する。江戸時代における貨幣政策は改鋳がほとんどで、その度に金や銀の含有量が減り、減った分だけ幕府の儲けとなるという政策を採っていた。

一時的に幕府の財政を潤すが、貨幣価値が下落し、市中でインフレが起きるので歓迎されなかった。今回はこの政策に絡んで入り乱れる思惑から起きる事件を物語としている。

こう書くと、何やら面倒なことを扱っているように思われるかもしれないが、こうした部分をすっ飛ばしながら読み進めても、充分面白く、気負わず読むことの出来る作品である。

内容/あらすじ/ネタバレ

明和九年(一七七二)、豊後関前城下に三人の若者が江戸から戻ってきた。坂崎磐音、河出慎之助、小林琴平である。この三人は遊びも学問も共に付き合ってきた仲である。

そして慎之助の妻・舞は琴平の妹、そして磐音の許嫁も琴平の妹で三人は小林家の姉妹を通じて姻戚関係が結ばれようとするほどの仲でもある。だが、帰藩早々に事件が起きる。

河出慎之助が妻・舞の不義の噂を聞きつけ、問いただし、手打ちにしてしまったのだ。これに端を発し、琴平が慎之助を斬り、そして、磐音が琴平を斬らねばならない事態へと発展する。

この悲劇は養家から戻された遊蕩児と酒毒に士道を忘れた中年男が流した悪意のこもった流言がもたらしたものだった。

許嫁・奈緒の兄・琴平を殺した磐音は、奈緒を娶るというささやかな夢を奪われ、城下で暮らすことを諦めて江戸へと出た。

磐音が江戸に出てきたのはいいものの、明日の食事にも事を欠く有様である。大家の金兵衛が家賃滞納をされてもかなわないと、磐音に職を斡旋する。まずは、鰻割きの仕事で鉄五郎を紹介される。

そして、両替商・今津屋吉右衛門の用心棒。若干の曲折はあったものの、二つの仕事を磐音は得ることが出来た。

両替商・今津弥吉右衛門は脅されている。それは、田沼意次の新貨幣政策として出した南鐐二朱銀がもとである。狙いは上方経済圏との江戸経済圏との統一である。だが、これには根強い反対論者がいた。どうやらそこの辺りから狙われているらしい。

そこで用心棒をとなったのだが、磐音が一緒に組むことになるはずの品川柳二郎、竹村武左衛門がすぐに首になってしまう。これは二人の師匠が二人を破門して、代わりの用心棒を押しつけたからである。だが、この新たにやって来た用心棒の黒岩十三郎と天童赤司は野犬のようである。気を許せる相手ではなかった。

一体何を考えてこの二人を送り込んできたのか。磐音は先に首になった品川柳二郎、竹村武左衛門の両名にある頼み事をした。

今津屋では次第にことの真相が分かってきた。それは、南鐐二朱銀八枚と小判一両の交換による出目を目論んで大量の南鐐二朱銀を今津屋に持ち込み、今津屋を潰す魂胆なのだ。

そして、田沼改革を頓挫させる。裏にいるのはどうやら両替商の長老で両替屋行司の阿波屋有楽斎であり、さらには幕閣の老中が絡んでいるらしい。

今津屋に送られてきた用心棒はこのことに関係があるらしい。そして、いよいよ対決が始まる…。

本書について

佐伯泰英
陽炎ノ辻
居眠り磐音 江戸双紙1
双葉文庫 約三五〇頁
江戸時代

目次

第一章 向夏一石橋
第二章 暗雲広小路
第三章 騒乱南鐐銀
第四章 大川火炎船
第五章 雪下両国橋

登場人物

河出慎之助
舞…妻、琴平の妹
小林琴平…舞の兄
奈緒…琴平の妹、磐音の許嫁
蔵持十三…河出慎之助の叔父
山尻頼禎
福坂志山…分家当主、藩主叔父
宍戸文六…国家老
東源之丞…目付頭
参次
おみつ
市村集五郎…丹石流道場主
黒岩十三郎
天童赤司
毘沙門の統五郎
伊勢屋丹兵衛…両替商
阿波屋有楽斎…両替商
阿部伊予守正右…老中
徳兵衛…女衒
厳原湖伯…医者
源斎…医者
川合越前守久敬…勘定奉行
日村綱道…金座方
立川勇士郎…南町定廻り同心
千三…御用聞き

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