山本一力の「深川駕籠」を読んだ感想とあらすじ

覚書/感想/コメント


★★★★★★★★☆☆

物語は天明七年(一七八七)。

二人の駕籠舁き・新太郎と尚平の男気あふれる物語である。

新太郎は臥煙の纏振りだったが、屋根から転げ落ちて高いところに上れなくなった。深川富岡八幡宮でぼんやりしているときに堅気でない男どもに囲まれたのが元力士の尚平だった。

これが二人を結ぶ縁となったが、新太郎は実家の両替屋・杉浦屋から勘当されて人別帳から消されている。尚平も勝浦の浜から蓄電したので、お互い無宿者だ。その二人の身元を引き受けてくれたのが木兵衛である。

そして、駕籠舁きの仕事を斡旋してくれたのも木兵衛だ。二人は木兵衛に頭が上がらない。この木兵衛も男気と人情に厚いところがある。

脇役として重要な人物は「草笛の音次郎」にも登場する恵比寿の芳三郎である。「草笛の音次郎」では代貸の源七の方が重要な役回りであったが、本書では芳三郎本人がたびたび登場する。

この恵比寿の芳三郎のように、他の作品で登場する人物がもう一人登場する。「損料屋喜八郎始末控え」の喜八郎である。

他の作品で馴染みの登場人物も登場して、本作品に華やかさを与えている。これから期待したいシリーズである。

内容/あらすじ/ネタバレ

入谷鬼子母神。通りを見ていた源次が鳶の辰蔵に駕籠が見えたことを告げた。辰蔵は駕籠を呼び寄せ、雑司ヶ谷までかっ飛ばさなければならない客がいるから、引き受けてくれないかと頼んだ。

だが、駕籠舁きの新太郎は断った。そこを辰蔵は口を酸っぱくして頼み込んだが、新太郎はうんと言わない。客は草加のあられ問屋の手代である。そもそも、清吉が頼んだ駕籠が鬼子母神違いで、入谷と雑司ヶ谷を間違えたのが事の発端である。

辰蔵と新太郎がやり合っている間に、互いに意地がぶつかり合いはじめた。相肩の尚平がある提案をして、意地を掛けた勝負が始まる。

 新太郎と尚平は深川黒江町の裏長屋・木兵衛店に住んでいる。木兵衛は二人にとって親代わりである。その木兵衛が二人を呼んだ。

木兵衛の家には長屋の一番奥の棟に住む年寄り・正之助がいた。木兵衛は正之助と一緒に筑波山まで行ってくれという。そして、筑波山から正之助が採ったきのこを江戸まで運んでもらいたいという。

正之助は下妻藩から年五十両の俸給を得ている。役目は藩主母堂の祥月命日に松茸を届けることである。この松茸を運べというのだ。それにしても、正之助の風貌は変わっている。目には黒帯を巻き、鼻には綿を詰めていた。

そして、三人での筑波山への旅が始まった。

入谷近くの坂本村に行ったときのこと、あぜ道で酔っぱらった娘が騒いでいた。恵比寿の芳三郎の娘だった。新太郎と尚平は娘を送り届けた。

後日、芳三郎本人が二人に礼をした。その時に、娘が荒れていた理由を話してくれた。縁談があったのだが、娘が相手を気にくわなく、断ったのだ。

だが、今回二人を呼んだのは、この断りの時に断った縁談の相手・札差の堺屋伊兵衛から賭を申し込まれたからだ。賭は船と駕籠のかけっこ、それに相撲である。この賭に新太郎と尚平が出てくれないかというのだ。

木兵衛が親代わりとなっている順吉が奉公先でしくじりをしたらしい。しかし、これには裏がありそうで…

黒江町の肝煎連中がそろって相談をしていた。黒江町は寂れる一方である。どうしたものか。

その相談の中で、新太郎と飛脚の勘助が喧嘩をしそうになったとの話が出た。どっちの足が速いかでもめたのだ。そこで、二人が競争することになったという。

この話がやがて大きくなっていき、駕籠舁きの寅、それに源次が加わって四人での走りとなった。これに恵比寿の芳三郎の知恵が加わって、勝ち札としての興行となった。江戸中が盛り上がってきた。この勝負どうなる!?

本書について

山本一力
深川駕籠
祥伝社文庫 約四〇五頁
江戸時代

目次

菱あられ
ありの足音
今戸のお軽
開かずの壺
うらじろ
紅白餅
みやこ颪

登場人物

新太郎
尚平
木兵衛
辰蔵…鳶
源次
寅…千住大木戸駕籠の後棒
正之助
村上屋八右衛門…旅籠主
幸蔵
斎藤一郎…中川船番所吟味方与力
恵比寿の芳三郎
源七…代貸
達磨の猪之吉
おゆき
堺屋伊兵衛…札差
伊吹山…力士
丑之助…網元の息子
清吉…常磐屋手代
おしの
飯塚秀右衛門…御家人
松本靖ノ助…飯塚の家来
猿の玄三
順吉
しおり
喜平次…新旅籠町上野屋の跡取り息子
清右衛門
炭屋の玄六
庄吉…豆腐屋二代目
勘助…飛脚
留吉
さくら
籐吉
大野清三郎…南町奉行所同心
仙太郎
豊吉
亮介
喜八郎…損料屋
嘉介…番頭