池波正太郎の「上意討ち」を読んだ感想とあらすじ(面白い!)

作家あ行
この記事は約5分で読めます。

覚書/感想/コメント

★★★★★★★★★☆

剣豪ものが「卜伝最後の旅」、新選組関係が「剣友渡辺曻(のぼり)」「色」「龍尾の剣」。似た主題をあつかっているのが「恋文」「刃傷」。

「上意討ち」
最初にも書かれているが、池波正太郎はある特定の人物と、よく街で出会うことがあるらしい。都内で特定の人物とよく出会うというのは、ほとんど奇跡的である。何かしらの縁があると感じても不思議ではないだろう。そんなところからヒントを得ているようだ。

「雨の杖つき坂」
最後の最後にどんでん返しがある。それまでの想定が全て覆されるくらいのどんでん返しであり、かつ必然的であるようなどんでん返しである。

「卜伝最後の旅」
塚原卜伝の弟子の一人諸岡一羽は「剣法一羽流」にも登場する。

「色」
函館に来てから、土方歳三の人柄ががらりと変わったというのは面白い。青ざめていた顔にも血がのぼるになり、誰とでも気兼ねなく語らい、笑い合ったというのだ。どうしても、ニヒルな土方歳三を想像してしまう私としては、不思議な感じがする。

内容/あらすじ/ネタバレ

激情

お喜和は中老・岸尾として奥御殿に奉公している。そのお喜和が奥方に呼ばれて、こたびの信子の婚礼のことを言い出した。信子は側妾の娘で、こんど六十七万石の太守の跡継ぎに嫁ぐのである。
奥方はこれが口惜しくてならない。そこで、奥方がお喜和に命じたのは、明後日の宴席で信子の食膳に毒を盛ることであった。

上意討ち

森十兵衛は上意により田中源四郎を探し出して討たなければならない。だが、十兵衛は源四郎を斬りたいと思っていなかった。だから、なんとかして合いたくないものだと思っていた。

もとはといえば、今度のことは殿さま自身が無理を仕掛けたところから発展している。だから、尚更出会いたくないのだ。
しかし、不思議と田中源四郎と出会ってしまう。この三年間に四度も合っている。そして、五度目の出会いとなった。

恋文

音吉が恋文を新七から受けたときは夢じゃないのかと思った。その恋文はおそのという娘であった。音吉は約束の場所に行くと伝えてくれと新七に頼んだ。

しかし、これは音吉を妬む平次郎のいたずらであった。新七と一緒に音吉をからかおうという魂胆なのだ。

音吉はそうとは知らずに約束の場所に行く。だが、おそのは現れない。途方に暮れている様子を見かねた新七が声をかけると、音吉は店の金を持ったまま逃げてきたので、帰るにも帰れなくなっているのが分かった。新七は音吉が大金を懐にしているのを知ると、音吉を殺して逃げてしまった。

刃傷

千代に恋文が届いた。差出人は辻又五郎である。

千代は二十六になるまで一度も縁談がない。それは、容姿の問題と、そして、剣術の腕前もそうさせてしまっていた。

千代は辻又五郎からの恋文に書かれている通りに、約束の場所に向かった。すると、千代を嘲る笑い声が聞こえてきた。その笑い声の中に江戸家老の長男・田中主馬の声があった。

雨の杖つき坂

源七がある旅の博奕打ちの姿を見て、もしやと思ったのはさすがの勘働きであった。

源七と彦太郎は四年前に竹原の喜助の家に殴り込みをかけた。その時の報復だろう。

追いかけてきたのは野川の弥市と三ツ堀の岩吉で、旅の博奕打ちは橋羽の万次郎という助っ人だった。

卜伝最後の旅

塚原卜伝がふたたび甲斐を訪れたのは七十三歳の時である。武田晴信は信玄と名を変え、上杉謙信との対決に臨むところであった。

信玄のところで、卜伝は梶原長門という剣客と立合うことになった。勝敗は一瞬のうちに決した。

この後、しばらく甲斐にいて、卜伝はふたたび旅に出た。目的地は京。足利義輝に会うつもりであった。

剣友渡辺曻(のぼり)

幕末。渡辺曻は天然理心流の近藤勇に頼まれると、近藤道場に行き試合をすることがしばしばであった。

世の中は井伊直弼が桜田門外で殺されるという事件が起き、俄然騒がしくなってきていた。

近藤勇みが渡辺曻に別れの挨拶に来たのは、それからしばらくしてのことであった。近藤は京へ向かうことになったのだ。

渡辺曻も主家の九州・大村藩に戻ることになった。そして、渡辺曻は桂小五郎、坂本竜馬、中岡慎太郎らと交わり始めた。そうなった渡辺曻が京に出ると、新選組から狙われる立場となる。

土方歳三は農家に生まれ、商家で奉公したこともあったが、多摩に戻り剣術に没頭するようになった。

やがて、近藤勇らと京へ向かい、京都守護職の庇護のもと新選組となり、市中取締りに活躍する。

その歳三がお房に出会ったのは、歳三が一人で外出し襲われたときであった。

龍尾の剣

永倉新八は初対面から藤堂平助が気に入らなかった。永倉新八は幼いころから悪戯が過ぎ、親を困らせていた。その新八がのめり込んだのは剣術で、それをたよりに生きてきた。

永倉新八が藤堂平助に会ったのは近藤勇に紹介されたときだった。やがて、近藤勇を中心としたグループは新選組になっていく。

疼痛二百両

大原宗兵衛秀望は頭を悩ませていた。それは跡継ぎ問題である。出来の悪い殿さまが突然死んでしまい、跡継ぎはまだ四歳の幼児にすぎなかった。いま、この若殿が跡継ぎになれるかどうかは、藩存亡を賭けた事件となっていた。そのためには、金を使って方々に働きかけをしなければならない。だが、藩には一銭もなかった。

こうした中、高木彦四郎から誘いが来た。久々に合ってみると、かつて二人とも関係のあった女の娘が生きており、二人のどちらかが父親の可能性があるという。

晩春の夕暮れに

筒井土岐守忠親が何故にあのようなことをしたのかは今もってわからない。

筒井土岐守忠親が招待を受け、その席で酔っぱらい外を歩いていたときのことである。ふと見ると、百姓女の裸体が目につき、そのまま挑みかかってしまった。

話は渡り中間どもの耳に入り、間男大名だの手ごめ大名だのと揶揄されてしまう。悪いことに将軍の耳にも入ってしまい、国替えとなる。

本書について

池波正太郎
上意討ち
新潮文庫 約三七〇頁
短編集 江戸時代

目次

激情
上意討ち
恋文
刃傷
雨の杖つき坂
卜伝最後の旅
剣友渡辺曻(のぼり)

龍尾の剣
疼痛二百両
晩春の夕暮れに

登場人物

激情
 お喜和(岸尾)
 お千代(江川)
 信子

上意討ち
 森十兵衛
 田中源四郎

恋文
 音吉
 新七
 平次郎
 おその

刃傷
 千代
 辻又五郎
 田中主馬

雨の杖つき坂
 源七
 彦太郎
 野川の弥市
 三ツ堀の岩吉
 橋羽の万次郎

卜伝最後の旅
 塚原卜伝
 武田晴信
 梶原長門
 足利義輝

剣友渡辺曻(のぼり)
 渡辺曻
 近藤勇


 土方歳三
 お房
 山口平吉

龍尾の剣
 永倉新八
 藤堂平助

疼痛二百両
 大原宗兵衛秀望
 高木彦四郎

晩春の夕暮れに
 筒井土岐守忠親
 おさと

Do NOT follow this link or you will be banned from the site!
タイトルとURLをコピーしました