池波正太郎の「剣客群像」を読んだ感想とあらすじ

覚書/感想/コメント

★★★★★★★☆☆☆

「群像」の名の付く三部作の一作。

「秘伝」
諸岡一羽斎の弟子たちを巡る物語。同じ題材で「剣法一羽流」収録の「剣法一羽流」を書いているが、あてている焦点が異なるので、読み比べると面白いだろう。

「妙音記」

まんぞくまんぞく」と大筋で似ているが、転機となる出来事が大幅に異なる。これも読み比べると面白いだろう。

「弓の源八」

耳に痛いのは次の言葉か。「金力を忌み、つとめて立身の事も避け…。なれど、…本心は人一倍に金もほしく、立身出世も好きな男なのでござる」「好きなればこそ避けて通った。…つまりは浮世の常道とやらいうものがおそろしい。」

「寛政女武道」

牛堀九万之助は「剣客商売」でも登場する牛堀九万之助と同一人物としてみてよいのか、わるいのか。この作品からは何とも判断しがたい。

内容/あらすじ/ネタバレ

秘伝

四年前に徳川家康が関東に入国したばかりの時代である。日本無双の剣士を名乗る岩間小熊の評判は高まり、ついに根岸兎角と勝負することになった。

この二人、ともに諸岡一羽斎の弟子である。一羽斎が死んですぐの時に根岸兎角が秘伝の書を盗んで逃げたため、岩間小熊が追いかけてきたのである。

勝負は岩間小熊が勝ち、秘伝の書を兎角から奪い返した。だが、この書には何も書かれていなかった。白紙なのである。

妙音記

佐々木留伊は自分を打ち負かすほどのものでなければ結婚しないといい、叔父を呆れさせている。そして、留伊に挑んで勝てた者がいまだにいない。

次に指名されたのは小杉九十郎であった。これは主命によるものである。この勝負で留伊は…

かわうそ平内

辻平内は無外流という剣術を遣うらしいが誰も見たことはない。近隣では川獺先生で通っている。

この平内を杉田庄左衛門と杉田弥平次の兄弟が訪ねてきた。二人は敵討つ身である。相手は山名源五郎。

柔術師弟記

関口八郎左衛門氏業は愛弟子の井土虎次郎の豹変振りに困惑していた。手塩にかけたこの愛弟子が、あろうことか無断で他流試合をし相手を死に至らしめているという。

ある日、関口八郎左衛門氏業は覚悟を決める。

弓の源八

子松源八は年少のころから弓に才を見せた。が、兄が松江藩の汚職事件・棚橋くずれに連座して牢に押し込められ、子松家が取り潰しになると、源八は田舎の村に引っ込んだ。

兄の所行を恥じていた源八だが、おりつという寡婦と知り合い少しずつ変わってきた。

寛政女武道

牛堀九万之助の女中・お久と弟子・松岡弥太郎がわりない仲になった。だが、この松岡弥太郎は坂口兵馬とかけをしていたのだ。二人で誘いをかけ、どっちが先にお久をものにできるか。

ごろんぼ佐之助

後年、新選組隊士として有名になる原田佐之助。伊予松山では悪漢として幼いころから有名であった。これは、佐之助が自分で用人の落胤と思っていたことから態度が尊大になり、それが外に吹き出したためである。

時代は流れ始めており、原田佐之助も脱藩して、江戸へと来ていた。

ごめんよ

青山熊之助が十二の時、ある小さな事件が起き、熊之助にある決意をもたらす。それは剣術を学ぶというものである。熊之助は山崎平に入門した。山崎は空鈍流の剣術をやっているという。

熊之助は山崎平に弟子入りしてから、相当な修行を積んだようであり、それを見抜いたものがいた。伊庭八郎秀穎である。

本書について

池波正太郎
剣客群像
文春文庫 約三〇五頁
短編集 江戸時代

目次

秘伝
妙音記
かわうそ平内
柔術師弟記
弓の源八
寛政女武道
ごろんぼ佐之助
ごめんよ

登場人物

秘伝
 根岸兎角
 岩間小熊
 土子泥之助
 諸岡一羽斎

妙音記
 佐々木留伊
 中西惣太夫
 小杉九十郎

かわうそ平内
 辻平内
 杉田庄左衛門
 杉田弥平次
 山名源五郎

柔術師弟記
 関口八郎左衛門氏業
 井土虎次郎

弓の源八
 子松源八
 おりつ

寛政女武道
 お久
 松岡弥太郎
 坂口兵馬
 牛堀九万之助

ごろんぼ佐之助
 原田佐之助
 まさ
 大原丑太郎

ごめんよ
 青山熊之助
 山崎平
 伊庭八郎秀穎
 佐々木只三郎
 伊藤博文