海音寺潮五郎の「蒙古来たる」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

元寇を舞台にした小説で、伝奇的要素が満載であり、海洋冒険小説でもある。

主人公は北条時宗ではない。前半は獅子島小一郎が、そして、前半の途中から河野道有が主人公という感じである。二人とも鎌倉幕府の御家人である。

話しは幕府の蒙古に対する対決姿勢に絡んで、幕府の主導権を握ろうとする勢力、天皇の皇位継承権争いを制しようとする勢力の思惑が入り乱れ、これに、ペルシャ王の娘・セシリヤ姫とその一行が絡んでくる。

伝奇的要素が強いのは、このペルシャ王の娘・セシリヤ姫が登場するからである。セシリヤ姫は蒙古に滅ぼされたペルシャ王の娘で、蒙古の執拗な探索を振り切って日本に逃げてきたという設定であり、加えてネストリウス派キリスト教徒という設定である。

この時代、すでにペルシャの領域ではイスラームが主流になっている。それをあえてネストリウス派キリスト教徒という設定にしたのは苦心の結果であろうと思う。イスラーム教徒登場させるより、馴染みのあるキリスト教徒の方がましというところか。

海洋冒険小説であるというのは、主人公の河野道有と獅子島小一郎らが、中国・朝鮮半島へと海を渡り敵情視察に出かけるからである。特に、河野道有は度々中国に渡ったことがある設定になっている点も面白い。

鎌倉時代に限らず、中世日本において、大陸との私貿易は盛んだった。日本は農耕民族であるという幻想のため、農耕以外の営みが非常に盛んだった事実を見落としがちであるということを強く指摘しているのは、網野善彦氏である。

今でも学校の授業では農耕民族的な教育をしているのであろうか。社会史の分野の研究が進んだ現在ではこうした教育はどうなのだろうか…。興味のある人は網野善彦氏の著作を読まれたい。

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内容/あらすじ/ネタバレ

無抵抗のおそろしく大きい僧形の男を、武士どもが制裁を加えながら捕まえようとしている。端からその様子を見ていた若者が飛び出し、仲裁に入った。

若者は獅子島小一郎。だが、仲裁は実らず、僧形の男共々武士どもに追われるはめになった。僧形の男は口がきけないようである。

僧形の男と一緒に大立ち回りを演じながら、この男の主と思われる人物のところに逃げることが出来た。主は女性だったが、日本人としては彫りの深い顔立ちをしており、金の十字架を拝んでいた。

異国の人である。女はペルシャの人間であるという。この後、獅子島小一郎はこの者達と分かれた。

大立ち回りの話を聞きつけた人物がいる。西園寺実兼である。このもとに獅子島小一郎は連れられてきた。というのも、小一郎は六波羅探題に捕まっていたのだ。それを西園寺実兼は無理を言って引き取ってきた。

小一郎は実兼と主従の約束をし、実兼のもとで過ごすことになった。そして、時折実兼の妹・多子の相手をすることになる。

西園寺実兼は蒙古からの使いのことを考えていた。鎌倉幕府は蒙古からの使者を追い返し続けている。もし蒙古の王が軍勢を差し向けてきたらひとたまりもないだろう。

だが、幕府の中でも意見が割れている。実兼の関心事は上皇の系統に皇位継承権を取り返すことである。実際に蒙古が来ようが来まいが関係がなかった。実兼は執権の北条時宗と対立する勢力と結託していた。

…さて、獅子島小一郎が多子と一緒に外出したときのこと。一悶着おき、困難しているときに、以前の僧形の男たちに助けられた。この時に初めて僧形の男の名を知った。

イスマイルというのだと、赤菊という少年が教えてくれた。この頃、河野六郎通有が鎌倉に向かおうとしていた。北条時宗に苦言を呈しに行くつもりなのだ。通有には今回の蒙古に対する幕府の姿勢が危なくて仕方がないのだ。

獅子島小一郎はなぜ西園寺実兼が自分を手元に置くのかがよく解らないでいた。それが解明したのは、実兼にある人物を討ち取ってもらいたいといわれたときだった。

小一郎は今までの行きがかり上承諾したが、その相手が天皇であることを知ると、実兼のもとを離れるしかなかった。当然、実兼は小一郎に追っ手を差し向けた。小一郎が逃げたのは赤菊やイスマイル達のところだった。

河野通有は鎌倉に着き、北条時宗と議論を交していた。通有は蒙古との和議を問うたが、時宗は静かにこれを退ける。通有はこの議論の中で時宗と意見は相違するものの、一角の人物を見た気がする。

通有が反執権派とみて接触をしてきたのが赤橋義直だった。だが、通有は義直にかえって不快感を覚えたにすぎなかった。

義直とあった帰り。辻角力が行われており、通有は飛び入りで参加した。この相手はイスマイルだった。彼らは鎌倉に来ていたのだ。イスマイルとの勝負が終わり、酒を驕る約束をしているとそこの西園寺実兼が通りかかった。

実兼はこれから赤橋義直に会いに行くようである。不穏な人間の接触であると通有は思ってしまう。ふと気が付くと、イスマイルはいなくなっていた。

さて、西園寺実兼とともに鎌倉に来た者がいた。妹の多子である。多子は獅子島小一郎が来ていやしないかと思い鎌倉にやってきたのだ。

鎌倉では様々の人間の思いが交錯する。この複雑に入り組んだ状況の中で、獅子島小一郎と河野道有は知り合い、小一郎は道有と供に行動するようになる。そして、イスマイル達も供に行動をすることになっていく。彼らは河野道有の本拠である伊予へ向かった。

こうした中、鎌倉では赤橋義直がとんでもないことを考えていた。執権・北条時宗を殺し、自分が権力を握ろうと考えたのだ。だが、ことは失敗に終わり、義直は命からがら逃げるはめになった。

さて、河野道有にはある思案があった。それは唐土に渡り、実際の様子を見てこようと思ったのだ。果たして本当に蒙古の軍が日本に向けてくるのか…

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本書について

海音寺潮五郎
蒙古来たる
文春文庫 計約九九〇頁
鎌倉時代

目次

えびす弓
異国の神
北山の雨
楊柳の宿
くぐつ
晩菊
日月の旗
イスマイル
北条時宗
辻角力
乗合船
色は匂えど
鎌倉港
亡国の賦

火華
炎の中に
悪魔の薬
もろこしヶ原
立正安国論
夕雲の涯
春の海
赤と黒
桐の紋
野心とクーデター
暗い情熱
邇ォ瑰花
巌下の電
投網
灯とり虫
祈る
大三島大明神
竜ノ口
西来の意
弘安四年夏
科戸の風
円成真覚

登場人物

河野六郎通有
獅子島小一郎
源次為則…道有の家来
智真房…河野通有の大叔父
赤菊
摩耶
セシリヤ姫
サキヤ
イスマイル
タイカン…犬
北条時宗…執権
大矢野ノ十郎
西園寺実兼…中納言
多子…実兼の妹
赤橋義直
岩国ノ太郎
陳似道
対馬の弥太六
肥前の五郎八
篠の嫗
平四郎惟時…孫
李適
無学祖元

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