藤沢周平の「霧の果て 神谷玄次郎捕物控」を読んだ感想とあらすじ(最高に面白い!)

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★★★

藤沢周平作品のなかで、最もハードボイルドな作品である。

藤沢周平が海外の推理小説を好んでいたことはよく知られていることである。この作品は、その影響がとても強く出ているといえる。

主人公の神谷玄次郎には、どことなくアウトローなところがあり、世を斜に構えて見ている部分がある。それは、母と妹が斬殺された事件に絡んで、玄次郎が勤めている奉行所に不信感があるからである。

だが、その一方で、事件があると緻密な調べと、鋭い推理によって真相を突き止めていく有能は一面をみせるのである。

こうした人物を主人公に据えて展開される物語は、ハードボイルド作品に見られる、一種の空虚さも兼ね備えながら、スリリングに進んでいく。

話が進むに連れ、玄次郎は母と妹が斬殺された事件の真相に近づいていき、最後のシーンは、まさにハードボイルドといえる展開になっている。

内容/あらすじ/ネタバレ

神谷玄次郎は北町奉行所の定町廻り同心である。この日もよし野で寝そべっていると、岡っ引の銀蔵がやってきて、人が死んだという。しかも、絞められたような痕がある。それを聞くと、玄次郎は着替え始めた。玄次郎はすさまじい筋肉の張りをしている。そのはずで、直心影流の道場で三羽烏の一人に数えられた腕の持ち主である。

玄次郎が遺体を確かめると、確かに絞められた痕がある。だが、その前に刺されてから絞められている。殺しである。殺されたのは若い娘だった。

玄次郎は銀蔵に女の身元を洗うように指示する。玄次郎には引っかかることがあった。三年前に若い娘が三人も殺されながら、犯人を捕まえられなかった事件を思い出したのだ。その時の犯人の手口と似ている。

今回の娘の死は、玄次郎をある事を思い出させる。それは、十四年前に斬殺された母と妹の姿である。その後、父も心労で他界してしまう。この母と妹の事件は、父が追っていた事件と絡んでいるという噂を聞いた。だが、その父が追っていた事件は上からの指示で中断させられていた。

玄次郎はその時の無念を思いながらも、事件の解決に向かって捜査を続ける。殺された娘はおゆみというのが分かった。


神谷玄次郎は、岡っ引の銀蔵が使っている直吉の行方がしれなくなっているという。その直吉の足跡をたどっていくと、玄次郎の同僚・鳥飼道之丞が使っている岡っ引・弥之助の姿が浮かんできた。


奥州屋の奉公人・増吉が殺された。奥州屋は、その前に簪一本がなくなったというので銀蔵に相談に来ていたのだ。それが玄次郎には引っかかる。玄次郎は、簪の行方を探すのが順番だといった。でなければ増吉を殺した犯人にたどり着かないだろうと思ったのだ。


酔っぱらいが死んでいた。浮浪の物乞いで、甚七といった。この甚七の過去を洗っている内に、甚七には家族がおり、かつては吉川屋の奉公人だったことが分かった。


むめという一人住まいの婆さんが殺された。真っ昼間のことだった。金が盗まれていた。物盗りの犯行だろうが、むめが金を持っていたことを知っている人間はほとんどいなかった。一体誰がそのことを知り得たのか?


玄次郎が例繰り方の同心・伊佐清兵衛から借受けたのは、亡き父の追っていた事件を記した文書である。そこでようやく少し事情が分かってきた。

その頃、玄次郎は重吉という男が殺された事件を追っていた。

本書について

藤沢周平
霧の果て 神谷玄次郎捕物控
文春文庫 約三四五頁
連作短編 江戸時代

目次

針の光
虚ろな家
春の闇
酔いどれ死体
青い卵
日照雨
出会茶屋
霧の果て

登場人物

神谷玄次郎…北の定町廻り同心
お津世…よし野女主人

銀蔵…岡っ引
おみち…銀蔵の女房

金子猪太夫…与力

おゆみ

鳥飼道之丞…同僚
弥之助…岡っ引
菅生半蔵…浪人
直吉…下っ引
作太郎…菊屋主人

増吉…奥州屋の奉公人
筆之助…神戸屋の若旦那
お園…奥州屋の娘
幸七…奥州屋手代

甚七…物乞い
孫次郎…吉川屋の主人

むめ
糸屋の隠居
文吉…孫
長吉…小間物売り

おひで
重吉
惣六

仙太…元下っ引、桶屋
十松…元岡っ引

佐代…雪駄屋の娘
歓喜院…行者
印南数馬…元寺社奉行同心
井筒屋善右衛門
村井藤九郎
お寿賀
水野播磨守康方…元御側衆

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