藤沢周平の「花のあと」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★☆☆☆
「旅の誘い」は「暗殺の年輪」に収録されている「冥い海」とあわせて読むと面白い。「冥い海」は葛飾北斎から見た広重が描かれており、「旅の誘い」では安藤広重から見た葛飾北斎が書かれている。

「花のあと」は以登が晩年になって昔話を語るという切り口で物語が進められている。

2010年に「花のあと」が映画公開された。

映画「花のあと」を観た感想と作品のあらすじや情報など
「花」というと、女性の青春を指すこともある。「花盛り」などと言われるとおりである。題名の「花のあと」とは、桜の季節の後、そして、女性の青春を終えた後、の両方の意味を含んでいる。

内容/あらすじ/ネタバレ

鬼ごっこ

吉兵衛が訪ねようとしたおやえが殺された。おやえは女郎屋の女だった。それを吉兵衛が身請けしたのだ。おやえの家に十手持ちがいる。

吉兵衛は元盗っ人である。十手を見ると恐怖が走る。おやえの家を離れて、ようやくなぜ殺されたのかを不審に思った。一体誰が、なぜ?
 

雪間草

松仙は三十六だが、世を捨てた人間だった。俗名を松江といい藩主・信濃守勝統の側妾だった。その松仙のもとに服部吉兵衛が罪を犯し国送りされたという話が伝わる。服部吉兵衛は松仙が城に召される寸前まで許嫁たっだ男である。
 

寒い灯

おせんの所に清太が訪ねてきた。姑のおかつが病に倒れたから手伝って欲しいというのだ。だが、おせんはおかつと馬が合わなく、家を飛び出していたのだ。今更なんの義理があって姑の看病をしなければならないのかという憤懣がある。
 

疑惑

蝋燭問屋河内屋に賊が入り込み、主の庄兵衛を刺殺し逃走する事件が起きた。だが、犯人はあっさりと捕まった。勘当されている養子の鉄之助が捕えられたのだ。

だが、鉄之助は庄兵衛殺しを否定する。定町廻り同心笠戸孫十郎は、はじめのうちこそ鉄之助が犯人であることに疑いを持たなかったが、やがて何か見落としがあるのでは思い始める。
 

旅の誘い

広重は東海道五十三次が好評であると目の前にいる保永堂から聞いた。そもそも保永道が東海道五十三次の話を持ってきたのだ。それまで広重は風景画をほとんど描いていない。それに、葛飾北斎という巨人がいた。

だが、保永堂は風景画こそが広重の本領であると言い切り、東海道五十三次を描かせたのだ。その保永堂の今日の表情は、儲けに走る商人の顔だった。それが、広重の心を重くする。
 

冬の日

外があまりに寒くて清次郎が軒行燈に酒の文字を掲げている店に入った。店には厚化粧の女が二人いた。その内の一人が清次郎をじろじろと見る。知り合いかと思ったが見覚えはない。そして店を出たが、店を出てから暫くして思い出した。女はおいしといった幼馴染であった。
 

悪癖

勘定方の四人は奉行からの命令で、女鹿川の改修工事にかかる費用の帳付けの仕事をしていたが、それが終わったので、飲みに行くことになった。今回の仕事は渋谷平助の算盤のおかげで早く仕上がった。

だが、飲みに行くにあたって上司の帯屋助左衛門が注文したのは、悪癖を出すなということだった。平助は飲み過ぎると誰か構わず相手の顔を嘗めるという癖があるのだ。それにしても、今回の仕事は異例ずくめだった。何かがあるのだろうか。
 

花のあと-以登女お物語

「七十五歳まで生きた先々代の殿・雲覚院はさばけた方で、春の季節になると、家中の女子どもに城の二の丸に入ることを許してくれた。今は許されなくなった昔の話である。

うわさがあった。それは花見の女子どもの中から見目の良い娘を物色しては御城に召したというのだ。事実かうわさかは知らぬ。」

この話をしていたのは以登である。五十年前の以登は十八で、年相応の花やぎを身にまという娘だった。もっとも、美貌ではなかったが。

花見も終え、帰り支度をした以登に声をかけた若者がいた。

若者は羽賀道場の江口孫四郎と名乗った。以登が先日の試合で見事に勝ったことを知っていた。

江口家は平藩士、以登の寺井家は組頭である。以登の心は浮き浮きしていた。それは羽賀道場の逸材として剣名の高い江口孫四郎に出会った喜びが含まれている。

江口は以登の剣をたかが女子の剣法とは侮ってもいなければ、組頭の娘であることもおもねってもいなかった。以登を好敵手として認めていたのだ。それが嬉しかった。

以登の父・甚左衛門は組頭から上には出世できなかったひとだったが、夕雲流の達人だった。その父から以登は剣の手ほどきを受けたのだ。

江口孫四郎と会う直前に以登は婚約がととのい、婿を迎える身となっていた。その前に、甚左衛門は丹精して育てた以登の剣を外で試したかったのだろう。羽賀道場で試合をさせたのだった。

以登は江口孫四郎と試合をさせてほしいと父に頼んだ。それは恋でもあった。父はこれを了承したが、場所は屋敷で行うことになった。

江口孫四郎がやってきた。以登の剣は江口の前では全く通用しなかった。そして父・甚左衛門は以登に気が済んだかと聞いた。以登には婿となる男が決まっている。二度と会うことはならなかった。それに、江口の方でも縁組の話が進んでいるらしい。以登は胸の中で終わった恋の行方を追っていた。

ひょんなことから江口の相手が分かった。勢津が教えてくれたのだ。以登とは御稽古仲間だ。

相手は加世だという。それは聞き過ごしできぬ名前であった。

加世の家は三百石の奏者の家柄で、才はじけた美人である。その加世にあるうわさがあった。妻子ある男と通じているというのだ。相手は藤井勘解由。若干三十歳で用人に挙げられた切れ者だ。

その噂から一年。江口との縁組を受け入れたということは、藤井と切れたということなのか…。

以登は、孫四郎に加世は似合わないと思った。それに奏者の役も似合わない。

それから一年近くたった四月の末。

城下から二里ほどのところに湯治場がある。以登がそこに行ったとき、加世と藤井勘解由が一緒にいる現場を見てしまった。白昼、ひともなげな…。

このままでは済むまい。以登は暗い気持ちでそう思った。いずれは孫四郎にも知れるだろう。知れれば血が流れ、孫四郎自身も無事ではいられまい。

不吉な予感は二年後に、裏書きされた。孫四郎が自裁したのだ…。

以登は許嫁の片桐才助を呼んだ。才助はいたって風采の上がらない人物だったが、江戸の高名な塾に学問に出て、再び戻ってきていた。

孫四郎は江戸で自裁していた。才助は調べることを受けあった。

孫四郎の自裁にはやはり藤井が絡んでいた。孫四郎は奏者としての藩の使者となったが、致命的な失態を犯したのだ。だが、このすべての指示を出していたのが藤井勘解由だった。

孫四郎は藤井と女房の密通をうすうす気づいていたらしい。後は才助の推測だが、藤井が先手を打ったということのようだ。

それに、藤井には何やら後ろ暗い気配があるともいう。どうも奸物の匂いがすると才助はいう。

以登が藤井勘解由を呼びだしたのは、夏の終わりごろだった。詰問をしても、薄ら笑っているだけだった。その姿に、さすがの以登も背筋が冷たくなった。それに藤井は無楽流の居合を遣うという。侮れない。

藤井は以登がここに来たことを知っているものがいないと知ると、するすると後ろに下がった。以登を亡きものにしようとしているのだ。

だが、逆に以登は間合いを詰め、勘解由の刀が鞘走る寸前に、懐剣で胸を一刺しした。

本書について

藤沢周平
花のあと
文春文庫 約二七〇頁
短編集 江戸時代
 

目次

鬼ごっこ
雪間草
寒い灯
疑惑
旅の誘い
冬の日
悪癖
花のあと-以登女お物語

登場人物

鬼ごっこ
 吉兵衛
 おやえ
 半左衛門(蝮の市蔵)
 
雪間草
 松仙(松江)
 服部吉兵衛
 信濃守勝統…藩主
 
寒い灯
 おせん
 清太
 おかつ
 喜三郎
 
疑惑
 笠戸孫十郎
 伊勢蔵…岡っ引
 おるい
 鉄之助
 
旅の誘い
 安藤広重
 保永堂竹内孫八
 池田英泉
 
冬の日
 清次郎
 おいし
 
悪癖
 渋谷平助
 帯屋助左衛門
 内藤惣十郎…奉行
 
花のあと-以登女お物語
 寺井以登
 片桐才助
 おふさ…婢
 寺井甚左衛門…以登の父
 加納幾之助…以登の外孫
 勢津
 江口孫四郎
 加世
 藤井勘解由

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