池波正太郎の「忍びの風」(忍者もの3)を読んだ感想とあらすじ(面白い!)

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★★☆

「蝶の戦記」で後半のクライマックスとなる姉川の血戦から物語が始まる。

今回の主人公は二人。

一人は甲賀・伴忍びの井笠半四郎。もう一人は甲賀・杉谷忍びのお蝶である。

姉川の血戦でほとんどの杉谷忍びが死んでしまった。この物語ではお蝶がその怨みを晴らそうと躍起になる姿が描かれている。一方の井笠半四郎は伴忍びでありながら、お蝶とくっついたり離れたり、または伴忍びを裏切った忍びとして追われたりと、複雑な状況におかれる。

さて、この物語でとても印象的なのは長篠の戦いにおける長篠城での出来事である。

ここの部分に限っては、鳥居強右衛門が主人公といってもよいくらいの内容である。絶望的な状況におかれている長篠城において、援軍の到着を確認する使者として、鳥居強右衛門が城を抜け出して岡崎に向かうのだが、その顛末がこの物語で最大の見せ場であると思う。

このシーンは凄く壮絶なのであるが、その一方で主従を超えた男同士の信頼・友情の姿が感動的ですらある。

池波正太郎はこのシーンのために、物語の最初から鳥居強右衛門を登場させ、伏線をはっている。

長篠城を巡るこのシーンだけで、一三〇頁を越す枚数を割いているが、伏線の部分を考えると、物語の前半はこの長篠城の話に持って行くためのもののような感じですらある。

極端な話をすれば、この物語の主人公の一人井笠半四郎は鳥居強右衛門を引き立てるための登場人物として登場させたのではないかとすら思えるのだ。読めば分かるのだが、確かに、お蝶では鳥居強右衛門とは絡みづらい。

さて、そのお蝶であるが、この物語でいったん消える。しかし、お蝶の物語はまだ続き、再び登場することになる。

本書に関係する短編
→「鬼火」(「忍者群像」に収録)

忍者もの

明確なシリーズではない。設定や主人公を読み替えることで、シリーズのように楽しめる作品群。おすすめの順番は次の通り。

  1. 夜の戦士
  2. 蝶の戦記
  3. 忍びの風 本書
  4. 忍びの旗
  5. 忍者丹波大介
  6. 忍びの女
  7. 火の国の城

内容/あらすじ/ネタバレ

織田信長と浅井長政が対峙する姉川の血戦でのこと。井笠半四郎は杉谷忍びのお蝶と出会った。伴忍びの井笠半四郎は甲斐の武田家に派遣され、武田家のために忍びばたらきをしている。

この時、井笠半四郎はこの戦いの結末を見届けるために戦場にいたのだ。一方お蝶は織田信長を倒すために浅井長政の味方をしていた。
姉川の血戦は織田軍の勝利で終わった。杉谷忍びは皆がこの戦いで死んだ。

この姉川の血戦のあと、山中忍びの頭領山中大和守俊房は伴太郎左衛門に相談を持ちかけた。その内容とは、伴忍びと山中忍びが結束して織田信長のために働くというものである。

伴忍びの中で武田家に派遣されているものはそのままにしておくことになった。というのも、その方が武田家の情報が流れてくるので、織田家にも有利だからである。

その頃、井笠半四郎のもとにお蝶が再び現れた。姉川の血戦に参加した杉谷忍びはお蝶を除いて皆死んだのだが、お蝶は姉川の血戦を生き残ったのだ。お蝶は杉谷忍びの復讐のためにも織田信長の打倒を誓う。

…さて、織田信長にとって脅威となる話が進行していた。それは、武田信玄が京を目指す軍を発したというものである。武田信玄の行く手に邪魔する徳川家康と織田信長を信玄は蹴散らすつもりである。

最初に対決するのは、徳川家康である。武田信玄と徳川家康が戦う三方ヶ原の戦いが始まる。この戦いの中で井笠半四郎は旧知の鳥居強右衛門と再会する。今度は敵味方である。

戦いは徳川軍の惨敗である。途中逃げる徳川家康に出くわした井笠半四郎は徳川家康をしとめようと考えた。だが、ここで山中忍びの武兵衛に邪魔をされる。半四郎は武兵衛との争いの中で山中忍びを殺している。

井笠半四郎はお蝶に誘われるままに、伴忍びを裏切る形になった。このことは頭領である伴太郎左衛門の知るところとなった。

三方ヶ原の戦いに勝利した武田軍が進撃をしない。そして、ついには甲斐へ戻ってしまう。その理由は武田信玄が死んだのである。このことはお蝶をいたく落胆させた。

武田信玄亡き後の武田家。武田勝頼が事実上の当主となった。その武田勝頼が再び大軍を率いて徳川家康を攻め立てる。舞台は長篠城。

圧倒的な軍勢で長篠城を取り囲む武田軍。長篠城を守るのは奥平貞能である。

絶望的な状況の中、徳川軍と織田軍の連合軍がやってくるのを待っている。果たしていつ来るのかを確かめるため、鳥居強右衛門が城を抜け出して岡崎へと向かう。そして、ついに長篠の戦いが切って落とされる。

……長篠の戦いから六年。姉川の血戦からは十一年の歳月がたった。織田信長に脅威を与えていた武田信玄が死に、武田家が織田信長の敵でなくなった今、信長にとっての敵は上杉謙信と中国の雄・毛利家である。

その一方である上杉謙信が死んだ。恐るべき信長の強運である。
だが、その織田信長に魔の年である天正十年(西暦一五八二年)が始まる。誰もが予想し得なかった波乱の年の幕開けである。

本書について

池波正太郎
忍びの風
文春文庫 約一三一〇頁
長編
戦国時代

目次


血戦
伴太郎左衛門
京の東寺
再会
三方ヶ原
甲賀屋敷
変転
信州・駒場
小谷落城
杉谷の里
鳥居強右衛門
長篠城
攻防
使者
烽火
大軍
老鶯
設楽原
安土の城
坂本の雪
奉公
信長馬揃
天正十年
高遠攻め
天目山
浪合の夜
凱旋
雲うごく
決意
老の坂
本能寺
二条の城
雨の声
黒い蝶

登場人物

<伴忍び>
井笠半四郎
伴太郎左衛門…伴忍び頭領
松尾藤七
中畑喜平太
<杉谷忍び>
お蝶
島の道半
十蔵…道半の息子
<山中忍び>
山中大和守俊房…山中忍び頭領
武兵衛
織田信長
織田信忠
羽柴秀吉
明智光秀
林彦蔵…明智家家臣
おるい…林彦蔵の妹
徳川家康
奥平貞能
鳥居強右衛門…奥平家臣
武田勝頼
柏木市兵衛
<伊那忍び>
杉坂十五郎

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