藤沢周平の「霜の朝」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

「報復」は下男の立場から見た主家の変事を書いており、その下男がいかにして主夫婦の無念を晴らすかというものである。その下男・松平の「下男には下男のやり方がある」という思いは重く感じる作品である。

「禍福」では、自分が不幸と思っていることも、そしてその不幸の原因と自分で思っていたことも、実は逆の立場になってみれば必ずしも幸せになれるようなものではないということを示している。

つまり、人は隣の家の芝生は青く見えるものであり、他人が幸せそうに見えても、実はそんなに幸せではなく、かえって自分よりも不幸なのかもしれない。

そう考えれば、他の人に対してやっかみや嫉妬の感情を持つこともなくなるのではないだろうか。

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内容/あらすじ/ネタバレ

報復

主の柚木邦之助が横死をした時のことを松平はあざやかにおぼえている。その日、邦之助を松平は次席家老の都築頼母のところへ送った。

普段と違う様子に松平は不安を覚えていた。果たして、松平は次席家老のところから松平は邦之助の遺体を運ぶことになってしまった。

そのことがあった後、柚木家を守るために妻女の康乃がとった行動は悲しいものだった。松平は柚木家に暇を告げ、去ることにした。あることを胸に秘めながら…。

泣く母

伊庭小四郎が通う道場に上士の矢口八之丞が入門してきた。小四郎は八之丞の面倒を見ることになった。

それまでは同じく上士の森雄之助が注目されていたのだが、より格上の家柄の矢口が入門して状況が変わってきたようである。そのことを面白く思わない森は何かにつけて八之丞を目の敵にするようになってきた。

小四郎に引っかかることがあったのは矢口八之丞の家のことである。小四郎は実母が死んだと聞かされてきていたが、実は理由があって他家に再び嫁いでいることを知っていた。

確かその家の姓が矢口といったはずである。とすれば、八之丞は小四郎にとって異父兄弟ということになる。

登城した布施甚五郎を待ち受けていたのは藩主の弟・織部正吉龍の上意討の命であった。これには甚五郎は驚き、同じく剣のたつ藤井源助をと固辞したが、源助は病気で駄目だという。

甚五郎はやむなく受けることにしたが、ひどく憂鬱である。もしかしたら討ちそこねるかもしれない。というのも、甚五郎には緊張した時に嚔が連発するという奇癖があるのだ。

しかも、決まって大事な時にこの奇癖が表に出るから困ってしまうのである。このことを知っているのは妻の弥生しかいない。

密告

定回り同心の笠戸孫十郎が伊勢蔵のところに寄った時のこと。伊勢蔵が磯六からの伝言があるといってきた。磯六は父が同心をしている時に使っていた男であるが、孫十郎の代になって縁を切った男である。磯六は際どいネタを持ち込むような男だったのである。

孫十郎は磯六が現れるのを待っていたが、磯六が現れない。不審に思っていると投げ文があり、磯六は現れないという。投げ文に書かれたところに赴くと磯六が殺されていた。

そして、孫十郎を狙ったように矢が飛んできた。一体誰が、何のために?磯六が殺される前に、じじいが帰ってきやがったな、と独り言を言っているのを聞いた者がいる。このじじいとは誰なのか?

おとくの神

仙吉は一つの仕事に落ち着くことのない男だった。だが、怠け者というわけではない。しばらくぶらぶらしているかと思うと、再び仕事を始めるのだ。そして、仙吉とおとくは蚤の夫婦だった。

その仙吉が帰ってこない。何かあっても必ず家に帰ってくる男なのにである。どうも、女が出来たらしい。こういうことは以前にもあった。

だが、今回は状況が違うらしい。おとくはこうした不安な場合、仙吉が以前に買ってくれた粗末な土器人形を抱きしめるのである。そうすると、不安が徐々に薄れていくのである。

虹の空

政吉とおかよはもうすぐ夫婦になる。そして、おかよは表店に住みたいという。このことに少し不安を感じる政吉だが、何とかなるだろうと思っている。

政吉には気持ちに引っかかったものが一つあった。それはおすがという母親がいるというものであり、まだおかよには告げていなかった。

このことを告げるとおかよは驚いたが、政吉は継母であり、幼い頃いじめられた記憶しかなく、今は他人だと言い切った。そして、政吉は久方ぶりにおすがに会いに行ってみた。

禍福

幸七は以前辰巳屋の手代だったが、今はしがない小間物売りをしていた。その前は井筒屋という店にいたのだが、ある事があって、店を移ることにしたのだ。

幸七は井筒屋にいる時に、店の娘おるいと夫婦にならないかと主に言われたのだが、そのときには幸七にはいそえという女がいたのだ。そのため、この話を断ってしまった。おるいと一緒になったのは長次郎という幸七と同じ手代の男だった。

ある日、昔いた井筒屋の竹蔵という男に声をかけられた。そして、竹蔵が語ってくれたのは…

追われる男

喜助は音吉という下駄職人の家に隠れ潜んでいた。後は、三木蔵がうまく連絡しておしんが訪ねてくれれば逃げ出せるはずだった。喜助はあるはずみで市次郎という職人を殺してしまった。そのために逃げ回っているのである。

その頃、おしんは迷っていた。かつておしんは喜助の嫁になりたかったのである。だが、喜助に捨てられてしまった。それなのに、今更…

怠け者

弥太平は生来の怠け者である。甥の紹介で仕事にありつけたものの、すぐに怠け者であることがばれてしまった。

次第に居づらくなってきたが、その中でもおかみのおこんだけは弥太平を普通に扱ってくれていた。そしておこんが外出する時には弥太平が供としてついていくこともあったのだ。

そのお供をしている時のこと、善助という名前だけは善良そうだが、とんでもない悪人の男に声をかけられた。そして、弥太平に押し込みの手引きをしろという。

歳月

妹のさちが信助と一緒になるので、姉のおつえに金を貸して欲しいと言ってきた。おつえは一時信助と夫婦になると信じて疑わなかった時期がある。しかし、おつえは信助と夫婦になることなく材木問屋上総屋に嫁いだ。

さちが訪ねてきたこの日、おつえは接待のために外出しなければならなかった。そして、この接待の後、おつえは上総屋の商売がうまくいっていないのではないかと感じるようになる。

霜の朝

寛永通宝の通用が廃止されるということを喜兵衛から聞いた時、奈良屋茂左衛門は紀ノ国屋文左衛門もこれで終りだと思った。そして、意外にあっけなかったという思いもあった。

長いこと奈良屋茂左衛門は紀ノ国屋文左衛門と張り合ってきた。それは遊びにおいてでもある。紀ノ国屋文左衛門が派手に遊べば、奈良屋茂左衛門は負けじと江戸に奈良屋茂左衛門ありと示すような遊びを繰り広げたものである。

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本書について

藤沢周平
霜の朝
新潮文庫 約三〇〇頁
短編集
江戸時代

目次

報復
泣く母

密告
おとくの神
虹の空
禍福
追われる男
怠け者
歳月
霜の朝

登場人物

報復
 松平…下男
 柚木邦之助
 康乃
 都築頼母…次席家老お

泣く母
 伊庭小四郎
 篠﨑鉄蔵
 矢口八之丞
 森雄之助


 布施甚五郎
 弥生…妻
 藤井源助
 織部正吉龍…藩主の弟

密告
 笠戸孫十郎
 伊勢蔵
 磯六

おとくの神
 おとく
 仙吉

虹の空
 政吉
 おかよ
 おすが

禍福
 幸七
 いそえ
 おるい

追われる男
 喜助
 おしん
 市次郎

怠け者
 弥太平
 おこん
 善助

歳月
 おつえ
 さち
 信助

霜の朝
 奈良屋茂左衛門
 喜兵衛
 紀ノ国屋文左衛門

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