藤沢周平の「驟り雨」を読んだ感想とあらすじ

覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

市井ものの短編集である。

この短編集には「捨てた女」や「泣かない女」のように不幸な女の話が多い。「ちきしょう!」に到っては悲惨ですらある。読後の後味決して良くはないのだが、悪くはない。後味の良し悪しよりも、別の感覚として、寂寥とした印象を受けた。

一方で盗人を主人公にした話が二編ある。「贈り物」と「驟り雨」である。「驟り雨」はある意味コミカルな短編である。そして同じくコミカルな印象があるのは「運の尽き」である。

これらの作品があるため、不幸な女の話があっても、短編集としては救われているのかもしれない。

内容/あらすじ/ネタバレ

贈り物

六十を過ぎた作十は横腹に痛みのでる病に冒されている日雇いである。いつも以上の痛みを覚え、動けずにいると、同じ裏店に住むおうめがやって来て介抱してくれた。

おうめは作十に親切にしてくれた。このおうめは亭主に逃げられて生活が苦しい。追い打ちをかけるように、その亭主が借金を残して逃げたために、おうめは女郎屋で働かされそうになっている。

作十はそれを見て、金は用意するから少し待てという。作十はどうやって金を作るつもりなのか?
 

うしろ姿

六助は酔っぱらうと誰構わず人を連れてきてしまう。そして翌朝にはさっぱり覚えていないのだ。今度六助が連れてきたのは、ひらたくいえば乞食ばあさんであった。

翌朝、おはまは六助にどうするつもりだとなじるが、六助は覚えていないのでどうしようもない。数日だけばあさんを預かり、その後出て行ってもらうつもりでいた。しかし、このばあさんを追い出せなくなるような事情が出てきてしまう。
 

ちきしょう!

おしゅんは少しぼんやりしているところのある夜鷹である。この日は一人も客が付かない。帰るかどうかを迷っていた。子供が病気なので気が気ではないのだ。

そこに酔った万次郎がやってきた。万次郎は気がくさくさしている。しかも金を持ち合わせていない。おしゅんはそんな万次郎を客として引いてみた。

万次郎は金がないので、と断ろうとしたが、おしゅんが意外にきれいなのに驚き客になってしまう。しかし、金のない万次郎は事が終わると逃げてしまった。

おしゅんは呆然とするが、仕方ないので家に帰ると、子供は死の間際であった…。
 

驟り雨

小さな神社の軒下に潜むのは嘉吉である。嘉吉は研ぎ屋が本職だが、血が騒げば盗人をする。今は盗人になりきっているのだ。目指す店は大津屋である。嘉吉は大津屋にある仕掛を施しているので、入り込む機会を窺っているのだ。はげしい雨が降っている。

不意に人の声がする。嘉吉は身を潜める。これをやり過ごすとまた人がやってくる。舌打ちをしたくなるような状況である。そしてまた人がやってきて…
 

人殺し

伊太蔵こそ疫病神のような男だった。この男からあらゆるもめ事が起こる。誰もが伊太蔵が長屋から出てくれればと思っている。出てくれないのなら、いっそ死んでくれないものかと思っていた。

善作という年寄のところに孫娘がたずねてきた時には、家の中に引っぱり込んで犯した。また、六助の女房を家に引っぱり込んでもいた。繁太はこうした一部始終を眺めてきた。

繁太と伊太蔵の関わりは薄かったが、それは伊太蔵が繁太を一人前として認めていなかったからであろう。だが、繁太にはある考えが芽生えてきていたのである。
 

朝焼け

新吉は博奕での借金が膨らんでいた。額は元利合わせて七両に達している。そしてついに胴元の銀助から期限を区切って返済するように迫られた。だが、新吉には返すあてがない。

新吉はやむにやまれずお品に合うことにした。お品は金を貸してくれた。しかし、新吉はこの借りた金を再び博打ですってしまう。もはや借りるあてすらない。そうしている内に返済の期限がやってきた。

銀助は新吉が返せないのがわかると、条件付で借金の棒引きを申し出た。つまり、ある事をすれば借金を棒引きにするというのだ。そのある事とは脅しである。その脅しで新吉はとんでもないことをしてしまう…
 

遅いしあわせ

店に入ってきたのは桶屋の職人である重吉という職人である。おもんはこの重吉に惹かれていた。この重吉が来ている時に、やくざ者の弟・栄次が金の無心にやってきた。

ある夜店から帰る途中でおもんは偶然重吉と会う。途中で男たちに絡まれるが、重吉が男たちに二言三言ささやくと男たちはおとなしくなってしまう。重吉は一体何を言ったのか。そして重吉の秘められた過去を覗いたような気がした。

そんなことのあった後のある日。栄次が賭場の金を使い込んだとの知らせを受ける。
 

運の尽き

水茶屋「おさん」にいつものように若者たちがたまっている。この若者たちは多少たちが悪かった。仲間に参次郎というのがいる。通称たらしの参次という。この参次郎がいるところにおつぎの父親という利右衛門がやってきた。

そして、おつぎの婿になってくれるなんて、ありがたいことだといいながら、参次郎を連れて行ってしまう。逃げようにも逃げられない。利右衛門の腕っ節は参次郎より遥かに強かった。その後、参次郎は利右衛門の営む米屋で強制的に働かされてしまう。
 

捨てた女

信助が家を出る時にいつものようにふきが台所から顔を出した。しかし、この時に信助はふきを捨てたのだった。そして新しい女のところに向かった。

ふきは矢場で働いていた、のろのろとした鈍くさい女であった。ふきをからかう客がいるのを、信助は許せなかった。ある日、このふきが矢場から閉め出されて途方に暮れいているのに出会う。

そして、ふきと一緒に暮らすようになった。だが、そのうち信助の暮らしが荒んできはじめた。
 

泣かない女

道蔵はお柳に恋いこがれていたが、お才という女房がいる。お柳は一度嫁いだものの、夫が病死して戻ってきていた。そのお柳に再び縁談話が持ちあがっているが、お柳はその話に乗り気になれない。それよりも、道蔵と一緒になりたいというのだ。

そこで、道蔵はお才とわかれようと心に決めた。だが、いざとなるとお才には言い出しにくかった。だが、お柳にせっつかれてついに意を決してお才に話をするが…

本書について

藤沢周平
驟り雨
新潮文庫 約三〇〇頁
短編集
江戸時代
 

目次

贈り物
うしろ姿
ちきしょう!
驟り雨
人殺し
朝焼け
遅いしあわせ
運の尽き
捨てた女
泣かない女

登場人物

贈り物
 作十
 おうめ
 六蔵
 
うしろ姿
 六助
 おはま…六助の女房
 ばあさん
 
ちきしょう!
 おしゅん
 万次郎
 
驟り雨
 嘉吉
 
人殺し
 繁太
 伊太蔵
 源次
 お澄
 
朝焼け
 新吉
 お品
 
遅いしあわせ
 おもん
 栄次…おもんの弟
 重吉
 
運の尽き
 参次郎
 利右衛門
 おつぎ
 芳蔵
 
捨てた女
 信助
 ふき
 
泣かない女
 道蔵
 お才
 お柳

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