池波正太郎の「雲霧仁左衛門」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)(最高に面白い!)

覚書/感想/コメント

★★★★★★★★★★

火付盗賊改方ものであるが、「鬼平犯科帳」とは異なり、長官自ら活躍するというものではない。時代も、「鬼平犯科帳」よりも前の時代の物語である。

この「雲霧仁左衛門」では、江戸を離れて、遠くは尾張まで出張って盗賊捜しに奔走する姿が画かれている。舞台のほとんどが江戸である「鬼平犯科帳」と異なる点でもある。

さて、雲霧仁左衛門という大盗賊を一方の主人公としている本書であるが、この雲霧仁左衛門なる大盗賊の正体自体がかなり謎めいた設定となっている。

物語の端々から”もとは武士”ではないのかと伺えるが、真相は物語の最後の最後まで分からない。雲霧仁左衛門の正体とは?本書で是非ご確認頂きたい。

池波正太郎の火付盗賊改方というと「鬼平犯科帳」があまりにも有名すぎるため、本書は霞んでしまう面があるが、「鬼平犯科帳」とは異なり、長編の面白さを十分に堪能できる時代小説であり、短編の「鬼平犯科帳」とは違う魅力にあふれた作品である。

内容/あらすじ/ネタバレ

名古屋の豪商・松屋吉兵衛は江戸で知ったお千代と名乗る女に惚れてしまい、名古屋に連れて帰ることにしたが、このお千代は大盗賊・雲霧仁左衛門の手下であった。

火付盗賊改方・安部式部が長官となってから七年ほどたつが、その間に、雲霧仁左衛門は二度も江戸市中で大ばたらきをしている。火付盗賊改方にしてみれば度々煮え湯を飲まされている相手なのである。

その雲霧仁左衛門の手下、お千代は何故に、松屋吉兵衛に近づいたのか。それは、松屋吉兵衛が資産を狙わんが為である。雲霧仁左衛門は松屋吉兵衛の店には二万両にもおよぶ財貨があると踏んでいた。それを盗むための、”引き込み役”にお千代を送り込んだのである。

一方、火付盗賊改方は江戸で雲霧仁左衛門につながるかすかな手がかりを手に入れたが、その手がかりは砂のように手からこぼれ落ちてしまった。この手がかりに係わった剣客・関口雄介は安部式部配下の同心・高瀬俵太郎の師匠である。

関口雄介が従兄弟の鈴木又七郎を訪ねに、尾張に赴いた際、尾張の地で雲霧仁左衛門の配下を見かける。急ぎ、火付盗賊改方に知らせの文を送り、火付盗賊改方もすぐさま高瀬らを尾張へ送り込んだ。

この尾張の地で、雲霧仁左衛門と火付盗賊改方は互いに活動するのだが、これとは別に尾張藩の隠密集団の暗闘と、さらには雲霧仁左衛門とは別の盗賊の動きもある。

雲霧仁左衛門はこの尾張の地で首尾よく盗みに成功したら、最後の盗みをして盗賊の世界から引退するつもりでいた。その最後の地に選んだのは伊勢の国・安濃津である。

雲霧仁左衛門は尾張での盗みを首尾よく終わらせられるのか?また、なぜ、最後の地に伊勢の国・安濃津を選んだのか?そして、火付盗賊改方との対決はどうなるのか?

本書について

池波正太郎
雲霧仁左衛門
新潮文庫
上下合計約一三三〇頁
江戸時代 徳川吉宗の治世

目次

情炎
舟と舟
皐月闇
木鼠の吉五郎
権太坂の夜
無断借用
白粉刷毛
恐怖
十間川の闇
相州・小田原唐人町
梅雨空

豪雨
異変の朝
尾張・名古屋
忍び駕籠
油断
見張り
尾行
櫓の福右衛門
金三十両
饂飩屋〔河辰〕
冷雨
棚釜の仁三郎
多度の日野屋
金二万両
その前後
その朝
その夜
その後
算者の家
王子稲荷
探りの糸

越後屋騒ぎ

登場人物

安部式部…盗賊改方長官
山田藤兵衛…筆頭与力
岡田甚之助…与力
高瀬俵太郎…同心
井口源助…同心
津山庄七…同心
柳助次郎…同心
目明かしの政蔵
桶屋の安太郎…政蔵の右腕
雲霧仁左衛門
木鼠の吉五郎…小頭
七化けのお千代
因果小僧六之助
三坪の伝次郎
山猫の三次
黒塚のお松
治平
伊平
小平
富の市
櫓の福右衛門
松屋吉兵衛
越後屋善右衛門
関口雄介…剣客
鈴木又七郎…関口雄介の従兄弟、尾張藩士