映画「コクリコ坂から」(2011年)の観賞備忘録(感想とあらすじと情報を添えて)

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感想/コメント

日本が最もエネルギーを発散していた時代

舞台は昭和38年(1963年)。翌年には東京オリンピックの開催が予定されている年です。

時代設定の近い映画として「ALWAYS 三丁目の夕日」があります。こちらの舞台は昭和33年(1960年)。

誰も彼もが熱にうなされていたように、ひたむきに前に進んでいた時代。

古いものが否定され、新しいものこそが価値があるとみなされた時代でした。

自己主張の最も激しかった時代でもあります。

時は経ち、この映画が公開されている時代は、その全てが失われた時代といってもいいでしょう。

この年の最も重要な出来事は、11月のケネディ大統領暗殺事件。世界最高の指導者が、暗殺されるという前代未聞の事件は世界を震撼させました。

ノスタルジックで牧歌的な時代としてイメージづけられる時代ですが、必ずしもそうではなく殺伐とした側面のある時代でもありました。

映画『コクリコ坂から』公式サイト
スタジオジブリ作品『コクリコ坂から』の公...

フランス語ゆかりが多い

主人公は二人の若者。松崎海に風間俊。海は友達にはメルと呼ばれています。海のフランス語がメール(MER)で、それがつまってメルとなっています。

同世代といえば、団塊の世代のほんの少し上になります。二人がこの時代を生きた若者を代表しているわけではないですが、こうした若者もいたのかもしれません。

いや、こうした悩みを抱えながらも前に進んでいった若者は数知れないのでしょう。

タイトルの「コクリコ」はフランス語で「ひなげし」を意味するそうです。

随所にフランスへの憧憬が感じられるますが、この当時、哲学はフランスの思想家を中心に新しい機軸が次々に打ち出されていました。

実存主義のサルトル、メルロ=ポンティ、構造主義のソシュール、ポスト構造主義…。現在に至るまで、強い影響を与えている数々の哲学が生まれた時代です。

映画に見る学生運動の時代

映画の舞台となっている1960年代前半は、学生運動の激しかった時代でした。

1960年の安保闘争/安保紛争は、日米安全保障条約改定をめぐる反対運動でしたが、闘争の中で死者が出る悲劇も起きました。

映画では、高校の男子文化部の部室棟「カルチェラタン」の老朽化による取り壊しをめぐっての論争が描かれているますが、時代の影響を感じる部分です。

フランス哲学もそうですが、この当時もっとも席巻していたのが、マルクス主義でした。理論的な是非はともかくとして、いわゆる共産主義を標榜する国家と、いわゆる西側諸国との「冷戦」時代でもありました。

映画の舞台となる1963年は、上記のようにケネディ大統領が暗殺されるのですが、この1年前の1962年にはキューバ危機が起き、文字通り第3次世界大戦の一歩手前に至る緊張状態でした。

冷戦のピークとなった事件でもあり、そうした時代でもありました。

男子文化部の部室棟「カルチェラタン」

カルチエ・ラタンはパリの地名で、学生街を象徴しています。パリのセーヌ川左岸、5区と6区にまたがり、パリ大学などが集まっている地区です。

カルチエは「地区」、ラタンとは「ラテン語」を意味しますが、これは、フランス語が未統一であった時代に、パリに集まった学生たちがラテン語で会話したことに由来しています。

1960年代、特に1968年の五月革命のときに、様々な反体制学生運動の中心地となった場所でもあります。

1968年の五月革命のときには、キューバ革命のチェ・ゲバラと文化大革命の毛沢東が象徴的に使われました。パリの学生が「革命の歴史」を掲げることで、各国の学生運動に熱をふりまきました。日本もその影響を受けています。

映画の時代よりは少し後になりますが、1960年代後半になると、世界に広がった学生運動を経て、カウンターカルチャーやヒッピーなどの文化が生み出されることとなります。

原作は漫画

原作は、佐山哲郎の原作、高橋千鶴の作画による漫画。少女漫画雑誌「なかよし」に連載されていました。

街並みなどは、横浜をイメージしているそうです。映画には、当時の山下公園や桜木町駅などが登場します。

港の見える丘公園には、2012年3月にスタジオジブリ初となる映画記念スポットが設置されました。

宮崎吾朗監督作品

監督は宮崎吾朗。前作の「ゲド戦記」は良くありませんでしたが、今回はまずますの感じです。

ですが、宮崎吾朗監督の癖なのだろうか、フェードイン、フェードアウトという感じの幕間が多発します。

前作では、これが酷過ぎてテンポが悪かったのですが、依然としてその癖は残っており、心配な部分があります。ですが、今回はだいぶテンポがいいです。

宮崎駿関係アニメ(一部)

あらすじ/ストーリー/ネタバレ

1963年、横浜。

東京オリンピックの開催を目前に控える日本。

港の見える丘に建つ古い洋館・コクリコ荘。ここに暮らす16歳の少女、松崎海は高校二年。父を海で亡くし、大学教授の母に代わってこの下宿屋を切り盛りし、下宿人もふくめ6人の大世帯の面倒を見ている。

あわただしい朝でも、船乗りの父に教わった「U・W」旗(安全な航行を祈る)をあげることは欠かさない。

丘の下をよく通るタグボートのマストに返礼の旗があがる。タグボートで通学していた17才の少年・俊は、海の上からその旗をいつも見ていた。

そんな海が通う高校では、歴史ある文化部部室の建物、通称・カルチェラタンの取り壊しを巡って学生たちによる反対運動が起こっていた。
それを取り壊すべきか、保存すべきか。

そんな事件の中で、海と俊は出会う。俊はその建物を守ろうと学生たちに訴える。海はその建物の良さを知ってもらおうと大掃除を提案する。

徐々に惹かれ合うふたりに、ある試練が襲いかかる。

海の家に招待された俊。そこで俊は海の父親の名を知る。

その日以来、俊は海を避けるようになった。我慢が出来なくなった海は俊に問い詰める。「嫌いになったのなら、はっきりそう言って」

俊は海に答えた。「俺たちは兄妹ってことだ」。自分たちは兄妹かもしれない。

アメリカから戻ってきた母に海は真相を聞き出す。そこにあったのは、戦争と戦後の混乱期の中で、親たちがどう出会い、愛し、生きたかというものだった。

映画情報(題名・監督・俳優など)

コクリコ坂から
(2011年)

監督:宮崎吾朗
プロデューサー:鈴木敏夫
企画:宮崎駿
原作:高橋千鶴、佐山哲郎
脚本:宮崎駿、丹羽圭子
音楽:武部聡志
主題歌:手嶌葵『さよならの夏~コクリコ坂から~』
挿入歌:坂本九『上を向いて歩こう』

出演:
松崎海 / 長澤まさみ
風間俊 / 岡田准一
松崎花 / 竹下景子
北斗美樹 / 石田ゆり子
松崎良子 / 風吹ジュン
小野寺善雄 / 内藤剛志
水沼史郎 / 風間俊介
風間明雄 / 大森南朋
徳丸理事長 / 香川照之

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