「はじまりのうた」の紹介です。
タイトルは原題の方が良いです。
原題は「Begin Again」。
やり直し、再開、出直しといったニュアンスになるでしょう。
原題のビギン・アゲインを映画タイトルにしたほうが良かったと思います。
その方がこの映画の意味が理解できるからです。
感想/コメント
「はじまりのうた」は、全米5館から始まり、口コミで人気を博し1,300館にまで広がった映画です。
監督および脚本は、「ONCE ダブリンの街角で」の監督ジョン・カーニー。
主演はシンガーソングライターを演じたキーラ・ナイトレイと音楽プロデューサーを演じたマーク・ラファロ。
マルーン5のアダム・レヴィーンが映画初出演。
マルーン5のアダム・レヴィーンが歌う劇中歌「Lost Stars」が第87回アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされました。
マルーン5のアダム・レヴィーンのファンには嬉しいシーンでしょう。
劇中歌としては「Coming Up Roses」の方が好きです。
ダンを演じたマーク・ラファロとスティーヴを演じたジェームズ・コーデンはとても良かったです。
グレタ役
グレタはキーラ・ナイトレイでなくても良かった思います。
グレタはイギリスから来ている設定。
キーラ・ナイトレイがイギリス出身という共通点はありますが…映画とは関係がありません。
監督はインタビューで次のように語っています。監督も不満だったようです。
「キーラをけなしたくはないけど、映画俳優になるのはハードなことだし、ある一定の正直さと自己分析が求められる。彼女はまだその準備ができていないと思うし、少なくともあの映画ではできていなかったよ」と語り、モデル業もこなすキーラを揶揄してか、「もう“スーパーモデル”とは一生仕事したくない」
https://www.cinematoday.jp/news/N0083200
映画で、ダンがグレタを売り出す戦略を熱く語るときに、カーディガンズを引き合いにするシーンがあります。
たしかに映画で流れる音楽は北欧ポップスの雰囲気があると思います。
転換期の映画
映画が公開された時期はちょうど音楽市場が急速にオンラインへシフトし始めた時期に重なります。
そして、それほど時間がかからずにサブスクリプションの時代へと移っていきました。
過渡期の音楽業界の姿が垣間見えるのが興味深い映画です。
映画の最後でグレタはレーベルからのデビューを断ります。
その代わり、オンラインでアルバムを販売する道を選択します。
レーベルでデビューする際に、グレタがどのような取り分になるかを確認しているシーンがありますが、興味深いシーンです。
アルバムが10ドルなら、アーティストの取り分は1ドル。
アーティストの取り分は1割で、残りの9割は宣伝費やレーベルのスタッフ費用として消えるというわけです。
アルバムの全てが出来上がっているのに、アーティストやミュージシャンに還元されるのが、たった1割しかありません。
それなら、直接アーティストやミュージシャンに還元されるオンラインによる直販の方がいいというわけです。
アップロードされたアルバムは1ドル。
そして、そこから入る収入はアルバムを制作した仲間で山分け。
映画で描かれているのは、制作するアーティスト達とアーティストの作品を楽しむ人々との距離が極めて近くなった様子です。
ですが、裏を返せば、現実はマージンを取っている中間者の存在が大きいということでもあります。
中間者を省けば省くほど、中間マージンが減り、アーティストも作品を楽しむ人々も得をします。
アーティストは取り分が増え、楽しむ側は払う額が減ります。
あらすじ/ストーリー/ネタバレ
グレタ
バーでライブをしていたスティーブは、イギリスから来た友人に歌ってもらおうとグレタをステージに誘った。
そんな気分でなかったグレタだったが、仕方なしにステージに上って歌い始めた。
歌うのが「A Step You Can’t Take Back」。
ダン
ダンは音楽プロデューサーで、かつては数多くのヒットを飛ばしたことがあった。
だが、気に入ったアーティストを発掘できていなかった。
この日、ダンは妻の代わりに娘を迎え行った。
娘を連れて自分で立ち上げたレーベルに向かった。
だが、そこで相棒のサウルとトラブルになって、会社から追い出されてしまう。
出会い
娘を妻の家に送り、情けない気持ちになって、街を酒を飲み歩いていたダン。
ダンはやけ酒をしながらニューヨークを歩き回っていた。そして、たまたま入ったバーでグレタの歌を聞いた。
アコースティックギターで歌っていたグレタだったが、ダンは歌に惹きつけられた。
そして、ピアノやストリングス、ドラムなどによるアレンジが聞こえた。
才能を見つけた。
興奮したダンはグレタに詰め寄り、レーベルとの契約を迫った。
グレタは全くそんな気がなく、ダンの話に乗らなかった。
グレタは自分のためだけに曲を作っているという。ダンはますますグレタを気に入った。
グレタはダンに付き合い、さんざん音楽の話をした。そして、気が向いたらダンに連絡すると言って別れた。
グレタとデイヴ
グレタの歌う「Lost Stars」に乗せて、グレタは想いに馳せていた。
グレタは恋人のデイヴの音楽が映画で使われてヒットしたこときっかけに、二人でイギリスからニューヨークにきていた。
デイヴはニューヨークで新たな音楽の創作活動に入り、ツアーへ出かけていた。
その間、グレタは友達のスティーブに再会した。
ツアーから戻ってきたデイヴが、グレタに新しい曲をを聞かせた。
グレタはすぐに自分のための曲ではなくほかの人を考えながら作った曲だと気づいた。
そして、グレタはデイヴのところを飛び出し、スティーブの家へ転がり込んだ。
デモの作成
翌朝、グレタから電話をもらったダンは、すぐさまレーベルに向かった。
サウルにグレタの才能を熱く語ったが、デモを作って聞かせろと言われる。
ダンもグレタも機材を用意してスタジオをでデモを作るだけの金がない。
そこでダンが考えたのが、ニューヨークの街の中でデモを作ること。
腕はいいが金が無く、退屈しているミュージシャンを後払いで雇った。
そして、スティーブの協力を得て、移動式のスタジオの準備が整った。
ダンとグレタと仲間たちは様々なところで「Coming Up Roses」を録音した。
たまに警察に追われたり、住民からもクレームを受けた。
出来上がったアルバムは最高だった。
デイヴ
ある日、デイヴからグレタに連絡があった。
失恋に悲しむグレタが、スティーヴに言われた作曲した音楽をデイヴの留守電に残した。
それを聞いて会いたいと言ってきたのだ。
こうした間にも録音は続いた。今度は「Tell Me If You Wanna Go Home」である。
久しぶりに会ったグレタにデイヴは自分の新曲「Lost Stars」を聞かせる。
グレタは曲本来の魅力が無くなっていると感想を述べた。デイヴはそれを理解していた。
デイヴはライブをするのでグレタに来てほしいと言った。
アルバムの完成
完成したアルバムをダンとグレタはレーベルに持ち込んだ。そして、レーベルはすぐさま契約することを提案した。
どうするかは検討すると言ってグレタは去ったが、ダンとグレタは大喜びだった。ダンはレーベルに復帰することになった。
その夜、グレタはデイヴのライブに行き、デイヴの曲を聞いた。
そこで見たのは曲の魅力を取り戻したデイヴと、スターになったデイヴだった。
グレタはうっすらと涙を流しながら、ライブ会場を去った。
グレタの決断
グレタはダンにレーベルとは契約しないと言った。
ダンは、いいんじゃない、君のアルバムだ、とだけ言って微笑んだ。グレタはダンのそうした反応が意外だった。
グレタはアルバムをオンラインで公開したいとダンにお願いした。
ダンはグレタの気持ちに応えてアルバムをオンラインで公開した。値段は1ドル。
映画情報(題名・監督・俳優など)
監督 / ジョン・カーニー
製作 / アンソニー・ブレグマン,トビン・アームブラスト,ジャド・アパトー
製作総指揮 / ナイジェル・シンクレア,ガイ・イースト,マーク・シッパー,トム・ライス,ベン・ナーン,サム・ホフマン,モリー・スミス
脚本 / ジョン・カーニー
撮影 / ヤーロン・オーバック,プロダクションデザイン,チャド・キース
衣装デザイン / アージュン・バーシン
編集 / アンドリュー・マーカス
音楽 / グレッグ・アレクサンダー
音楽監修 / アンドレア・フォン・フォースター,マット・サリヴァン
出演
キーラ・ナイトレイ / グレタ
マーク・ラファロ / ダン
ヘイリー・スタインフェルド / バイオレット
アダム・レヴィーン / デイヴ
ジェームズ・コーデン / スティーヴ
ヤシーン・ベイ / サウル
シーロー・グリーン / トラブルガム
キャサリン・キーナー / ミリアム