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(映画)墨攻(2007年)の考察と感想とあらすじは?

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感想/コメント

主人公・革離の属する墨家は、中国戦国時代の諸子百家の一つで兼愛、非攻、尚賢、尚同、節用、節葬、非命、非楽、天志、明鬼を主にした思想集団です。

代表的な思想家に、墨子がいます。

ですが、秦の時代に忽然と消滅します。

その後2000年の間に、史料がほとんど失われてしまい、今では一切が謎に包まれた存在となっています。

上記の中で有名な思想が「非攻」でしょう。

戦国時代において、戦争を非難し、他国への侵攻を否定したというのは希有な思想といえます。

ただ、そうはいっても墨家の主張するのは攻めてはいけないのであり、防衛のための戦争は否定していないようです。

そのため、墨家は土木、冶金といった工学技術と、優れた人間観察の二面により守城のための技術を磨き、他国に侵攻された城の防衛に自ら参加して成果を挙げたといわれます。

「墨守」という言葉の起源です。

この謎の集団「墨家」に属する革離という男を主人公にした小説を映画化したのが本作品です。

もっとも、「墨家」の”思想”を映画化しているわけではありませんのでご注意を。

主人公の革離は思想を担当する人間ではなく、あくまでも、彼らの有していた戦闘技術を使いこなすことのできるプロなのです。

ですから、映画の中で革離が悩むシーンが出てきても、思想的に悩んでいるわけではないことに注意しなければなりません。

とはいっても、誤解を与えそうな展開の仕方をしているのは確かなのですが…。

主演は「インファナル・アフェア」などのアンディ・ラウ、共演に韓国を代表する俳優「MUSA -武士-」などのアン・ソンギ。

この二人の演技はとても安定していて、安心してみることが出来ました。

とくにアン・ソンギは「MUSA -武士-」の時もそうでしたが、とても良い味を出していました。すばらしい俳優だと思います。

原作の小説にはない設定なのが、革離と逸悦の恋模様です。

コミックの方にはこの設定があるのでしょうか?

ま、映画なので、恋模様があった方が華があるというのはわかるのですが、イメージとしてはストイックな集団である「墨家」には似合わない気がします。

それに、防御のためとはいえ戦闘をせざるを得ないこと、そして戦闘で人が死んでいくのを見て悩む革離というのも「墨家」には似合わない気がしました。

この二点に関して違和感がありましたが、あまりにもストイックな描き方をすると殺伐とした映画になってしまっていたでしょうから、こんなものでよかったのかもしれません。

革離の恋模様の相手・逸悦が一人の女武者から女性へと変わっていくシーンなどは愛らしかったです。

対称的に、終始理性的で冷静だった子団も上手く脇を固めていたように思います。また、自らの権力にしがみつく梁王やその文官なども、憎たらしさと嫌らしさを上手に演じていたように思います。

キャスティングは総じて良かったように思います。音楽も重厚感があり、映画にあっていました。

原作は酒見賢一「墨攻」

酒見賢一の「墨攻」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)(面白い!)
物語の始まりは墨子と公輸盤との論戦から始まる。この論戦で語られることが、物語の最後で効いてくる重要な伏線となっている。さて、墨子は謎に包まれている思想家である。そして、その集団も謎に包まれたままである。
この年に公開された映画やドラマを下に方に載せておりますので、ご参考になさってください。

あらすじ/ストーリー/ネタバレ

紀元前370年頃の戦国時代。趙と燕の国境にある梁城は危機に瀕していた。趙の大軍が燕に侵攻しようとしており、手始めに攻撃されるのは必至だ。

百戦錬磨の巷淹中(アン・ソンギ)率いる勇猛な10万の趙軍に対し、梁城は全民わずか4千人。

頼みの綱は墨家の救援部隊だったが、間に合いそうもない。墨家は攻撃をせずに守り抜く非攻を信念とする集団だ。梁王(ワン・チーウェン)は降伏を決断する。

その直後、粗末な身なりをした墨家の革離(アンディ・ラウ)がたったひとりで駆けつけた。早くも趙軍の先遣隊がやってくると、革離は一本の矢で隊長・高賀用を退けてしまう。

一月持ちこたえれば趙軍は撤退するはずだと王に説明し、兵に関する全権を与えられた。

彼は、さっそく城を守る準備に取りかかる。老若男女を総動員して食料や様々の物資を集め、あらゆる攻撃に具えて作戦を立てる革離。

王の息子・梁適(チェ・シウォン)は、弓兵の子団(ウー・チーロン)が弓隊の統括に抜擢されたことに激しく反発するが、子団は彼と実力を競い合って見事に勝ち、革離の正しさを証明する。

大軍が攻めてくることに怯えて逃亡を試みる者もいた。しかし、妻子を連れていた農民の蔡丘ら4人は趙軍に捕まって尋問され、革離の存在を巷淹中に知られることとなる。

巷淹中は梁城の近くまでやって来て、革離に盤上の戦いを挑んだ。そして、革離を好敵手と見た彼は、実戦での再会を期して帰っていく。

ついに趙軍の猛攻撃が始まった。果たして革離は、たったひとりで城と民を守り抜くことが出来るのか…。

映画情報(題名・監督・俳優など)

墨攻
(2007)

監督:ジェィコブ・チャン
アクション監督:スティーヴン・トン
原作:森秀樹 漫画『墨攻』(小学館刊)、酒見賢一(原作小説)、久保田千太郎(漫画脚本協力)
音楽:川井憲次

出演:
革離(かくり)/アンディ・ラウ
巷淹中(こうえんちゅう)/アン・ソンギ
逸悦(いつえつ)/ファン・ビンビン
子団(しだん)/ウー・チーロン
梁王(りょうおう)/ワン・チーウェン
梁適(りょうてき)/チェ・シウォン

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