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(映画)ヴェニスの商人(2004年)の考察と感想とあらすじは?

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シェイクスピアの書いた37の戯曲の中で最も人気が高い「ヴェニスの商人」の映画化です。

ラブストーリー、法廷劇、人種問題、復讐、偏見、友情などの諸々の要素を持つ作品です。

この年に公開された映画やドラマを下に方に載せておりますので、ご参考になさってください。

感想/コメント

迫害されながらもヨーロッパで純然たる商人としての地位を持つユダヤ人。

強欲な金貸しのイメージそのままに、これを法廷でやっつけて万々歳というのが、従来の見方ではないでしょうか。

ですから、クライマックスとなるのは、人肉裁判での法廷劇となります。

ですが、この映画ではユダヤ人であるシャイロック側からの視点を重視しているように思われます。

つまり迫害されるものからの視点です。

もちろん、筋書きを変えていることはないのですが、それでも視点はユダヤ人たるシャイロック側からです。

このシャイロック役のアル・パチーノがとてもいいです。

特に最後のシーン。

街にたたずむシャイロックの、なんとも寂しくも、そして怒りを感じさせ、それでいて絶望をも感じさせる表情は秀逸です。

財産を奪われ、宗教を奪われ、娘も失ったシャイロック。

全てを失った者の、社会に対する、人生に対する理不尽さを、最後のシーンで、アル・パチーノは表情だけで表現しています。

負けじと、すばらしいのがアントーニオ役のジェレミー・アイアンズ。「キングダム・オブ・ヘブン」にも出演しています。

「切り取る肉は正確に1ポンド、一滴たりとも血を流してはいけない」

それが、シャイロックが求めた「法による公正な裁き」の結果です。

ですが、このおかげでアントーニオは命が助かります。

シャイロックとアントーニオが交わした契約は次のようなものでした。

「3カ月の期限内に借金が返せなかったら、アントーニオの肉1ポンドを引き替えにもらう」

当然「命をもらう」ということを意味しています。

ですから、この法廷劇自体が詭弁に過ぎません。

そんなことはアントーニオは重々分かっています。

自分も商人であるため、シャイロックと交わした約束は決死の覚悟で守るつもりでいました。

ですから、裁判に勝ち、その生きることを勝ち得た喜びと、シャイロックへの後ろめたい気持ち、これでいいのだろうかという風に思い悩むシーンがすばらしく見えるのです。

アル・パチーノとジェレミ・アイアンズの二人の演技が冴え渡る映画でした。

あらすじ/ストーリー/ネタバレ

※以下は公式サイトからの引用ですが、現在は公式サイトがありません。

1596年のヴェニス。

ヨーロッパの貿易の中枢として栄えたこの運河の街で、土地を持つことを許されないユダヤ人たちは、ゲットーの中に隔離される生活を余儀なくされ、金貸し業を営んでいた。

シャイロック(アル・パチーノ)も、そんな金貸しのひとりだ。

彼らが、キリスト教徒から迫害の対象にされたのは、宗教の違いに加え、高利で金を貸す行為がキリスト教の教えに反するとみなされたからだった。

ユダヤ人を示す赤い帽子をかぶって出かけたゲットーの外で、キリスト教徒の暴行の恐怖にさらされるユダヤ人たち。

シャイロックも例外ではなく、顔見知りの貿易商アントーニオ(ジェレミー・アイアンズ)から、顔にツバをはきかけられる屈辱を味わう。

そんなアントーニオとシャイロックの力関係が逆転する日が訪れたのは、それからまもなくのことだ。

原因を作ったのは、アントーニオの年下の親友バッサーニオ(ジョセフ・ファインズ)だった。

放蕩生活で財産を使い果たしたバッサーニオは、ベルモントに住む美しい女相続人ポーシャ(リン・コリンズ)に求婚するための資金を借りようと、アントーニオの元へやって来た。

が、アントーニオの全財産は、いまは船の積荷となって、世界中の海に散らばっている。

そこでアントーニオは、自分が保証人となり、シャイロックから金を借りることを提案した。

彼の書いた証文を携えて、さっそくシャイロックを訪ねて行くバッサーニオ。驚いたことに、シャイロックは、3000ダカットもの大金を無利子で貸すことを承諾した。

ただし、それには条件があった。

「3カ月の期限内に借金が返せなかったら、アントーニオの肉1ポンドを引き替えにもらう」というものだ。

常軌を逸したシャイロックの申し出に、アントーニオはたじろぐが、積荷が期限内に戻ると信じる彼は、バッサーニオの幸せのために、この条件を承諾した。

まもなくバッサーニオはベルモントへ出発。

その一行の中には、バッサーニオの友人ロレンゾー(チャーリー・コックス)と駆け落ちしたシャイロックの娘ジェシカ(ズレイカ・ロビンソン)の姿もあった。

彼女が、家の宝石類を持ち出したのを知り、怒り狂うシャイロック。

娘と財産を同時に失った彼の慟哭は、ヴェニスの闇を突き、街中に轟き渡った。

ベルモントで、バッサーニオたちは熱烈な歓迎を受けた。

それまでの求婚者とは違う若くハンサムなバッサーニオに、ひと目惚れしたポーシャは、結婚の条件である箱選びの試練に挑戦するバッサーニオを、祈るような気持でみつめる。

その思いが通じたのか、バッサーニオは正しい箱を選び、堂々とポーシャの夫となる資格を手にする。

さらに、バッサーニオの仲間グラシアーノ(クリス・マーシャル)が、ポーシャの侍女ネリッサ(ヘザー・ゴールデンハーシュ)に求婚したことによって、一行の喜びは二倍にふくらんだ。

だが、それもつかの間、バッサーニオの元にヴェニスからショッキングな知らせがもたらされる。

アントーニオの荷を積んだ船がすべて難破。借金返済の目処がたたなくなったアントーニオは、約束どおり、肉1ポンドをシャイロックに支払わなければならなくなったのだ。

その正当性を決する裁判が開かれることを知ったバッサーニオは、ポーシャと急いで結婚式をあげると、借金の2倍の額の金を携えて、ヴェニスへと戻った。

裁判では、アントーニオが窮地に立たされていた。

アントーニオに侮辱された過去の恨みに加え、娘の駆け落ちによってますますキリスト教徒への憎しみをつのらせたシャイロックは、公爵の「慈悲を」という言葉にも頑なに耳を貸さず、証文どおりにアントーニオの肉1ポンドをもらうと言って譲らない。

バッサーニオが差し出した2倍の金も、彼ははねつけた。

と、そこにベラーリオ博士の推薦状を携えた若い法学博士が到着。

裁判は、彼の手に委ねられることになった。

博士の冷静な尋問が進む中、依然として意固地な態度を変えないシャイロックと、「もはやこれまで」と覚悟を決めるアントーニオ。

そしてついに、アントーニオの肉が切り取られようとしたとき、博士の言い放った一言がすべてを変えた。

「切り取る肉は正確に1ポンド、一滴たりとも血を流してはいけない」。

それが、自ら求めた「法による公正な裁き」の結果だとわかり、シャイロックは愕然。

あわててバッサーニオの金を受け取ろうとするが、時すでに遅し。

全財産の没収とキリスト教への改宗という判決にうちのめされた彼は、よろめくような足取りで法廷を立ち去った。

いっぽう、土壇場での逆転劇を喜んだバッサーニオは、博士に謝礼がしたいと申し出る。

そんな彼に博士が求めたのは、ポーシャと婚約する際、「ぜったいに外さない」と誓った愛の記念の指輪だった。

バッサーニオは、なんとか指輪を手放すまいとするが、結局は博士の言葉に負け、指輪を贈ってしまう。

アントーニオを伴ってベルモントへ戻ったバッサーニオを待ち受けていたのは、例の指輪に対するポーシャの厳しい追求だった。

指輪を男に贈ったというバッサーニオの言葉を、信じようとしないポーシャ。

しかし、それは彼女のイタズラだった。

ポーシャは、例の指輪をバッサーニオに返すと、自分が男装して博士を演じていたことを打ち明ける。

同じように、博士の助手に変装してグラシアーノから指輪を取り上げたネリッサも、夫に指輪を返し、すべては丸くおさまった。

こうして、2組のカップルは幸せなまどろみの中へ。

そのころ、ベルモントの浜辺には、何もかも失った父シャイロックに思いを馳せるジェシカの姿があった。

映画情報(題名・監督・俳優など)

ヴェニスの商人
(2004)

監督:マイケル・ラドフォード
原作:ウィリアム・シェイクスピア
衣装デザイン:サミー・シェルドン
音楽:ジョスリン・プーク

出演:
シャイロック/アル・パチーノ
アントーニオ/ジェレミー・アイアンズ
バッサーニオ/ジョセフ・ファインズ
ポーシャ/リン・コリンズ
ジェシカ/ズレイカ・ロビンソン
グラシアーノ/クリス・マーシャル
ロレンゾー/チャーリー・コックス
ランスロット/マッケンジー・クルック
ネリッサ/ヘザー・ゴールデンハーシュ
サレリオ/ジョン・セッションズ
ソラーニオ/グレゴール・フィッシャー
老人ゴボー/ロン・クック
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