1840年代から1860年代南北戦争のころまでのニューヨークが舞台です。
この映画で描きたいのはアメリカの移民の歴史です。
その歴史を、独立を勝ち取ったスコットランド系と、ホワイト・ニガーと呼ばれて、黒人同様の差別を受けていたアイルランド系のギャングの立場から描いています。
終盤のシーンは、混沌としすぎて監督の意図が分かりません。
デッド・ラビッツとネイティブ・アメリカンズの抗争と、暴徒化する市民を鎮圧しようとする軍隊との衝突を、なぜ同時に描く必要があるのでしょうか。
見る側としては、最初のデッド・ラビッツとネイティブ・アメリカンズの抗争シーンが頭にあるので、同じようなシーンが繰り広げられて、結末は当初の抗争シーンとは逆になるだろうことを期待していたのではないかと思います。
ですが、実際には、市民と軍隊との衝突に巻き込まれてしまい、抗争どころではなくなってしまいます。
見ていて自然な流れは、デッド・ラビッツとネイティブ・アメリカンズの抗争が決着がついて、その直後に市民と軍隊の衝突に巻き込まれて、デッド・ラビッツもネイティブ・アメリカンズも瓦解していく、というものではないかと思います。
このシーンであえて混乱を描いたのは、ギャング同士の抗争ですら、世間の急激な変化の波に巻き込まれてしまうくらいすさまじい混乱・混沌期だったということを表現したかったからでしょうか。
最後に、ニューヨークの風景が変遷していくシーンをあえて挿入しているところを見ると、そうした意図だったのだろうかと思いました。
コメント
ビル・ザ・ブッチャーの圧倒的な存在感
ダニエル・デイ=ルイス演じるビル・ザ・ブッチャーの圧倒的な存在感はすごいです。
ですが、これにまったく引けを取らない存在感をレオナルド・ディカプリオは出していた。二人の演技が、この映画をうまく引き立たせています。
小ネタ…ギャングのモデル
ビル・ザ・ブッチャー、モンク、ジョニー・シロッコは実在のギャングをモチーフとしています。それぞれ、ウィリアム・プール (ビル・ザ・ブッチャー)、モンク・イーストマン、ジャック・シロッコです。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(1984年)…ユダヤ系ギャングの半世紀に及ぶつかの間の栄光と挫折をノスタルジックに描く一大叙事詩的大作。
あらすじ/ストーリー
1846年、ニューヨーク
アイルランド系移民で構成されたデッド・ラビッツと、独立戦争時代から続くスコットランド系ギャング、ネイティブ・アメリカンズの抗争が熾烈を極めていた。
教会地下の洞窟でデッド・ラビッツの面々が戦いの準備をしていた。
両者の五つの通りが集まる交差点ファイブ・ポインツの所有権を賭けた戦いが始まろうとしていた。
壮絶な戦いは棍棒、斧、ナイフ、肉切り包丁などでの血生臭いものだった。
デッド・ラビッツのリーダー、ヴァロン神父がネイティブ・アメリカンズのリーダー、ビル・ザ・ブッチャーに殺され、抗争はネイティブ・アメリカンズの勝利に終わった。
ビル・ザ・ブッチャーはデッド・ラビッツの消滅を宣言し、ファイブ・ポインツはネイティブ・アメリカンズのものとなった。
ヴァロン神父の息子・アムステルダムは捉えられ、少年院に投獄された。アムステルダムはビル・ザ・ブッチャーへの復讐を誓った。
16年後
アムステルダムはニューヨークに帰ってきた。
ニューヨークは、移民達と、移民たちを支持者として取り込みたい政治家、徴兵制度に反対する市民達など、混とんとしていた。
アムステルダムがファイブ・ポインツに戻った。そこは既にネイティブ・アメリカンズが牛耳る腐敗した町になっていた。
教会地下の秘密の隠し場所からナイフを取り出した。ナイフはビル・ザ・ブッチャーが父を刺し殺したナイフだった。
アムステルダムはチンピラ二人絡まれるが、撃退した。一人はジョニーで、子供の頃のアムステルダムを知っていた。
アムステルダムはジョニーから、デッド・ラビッツの後継組織はない事を教えられた。父親の昔の仲間は皆、ビル・ザ・ブッチャーの手先になっていた。
ネイティブ・アメリカンズは政治団体タマニー党が関心を寄せるくらいに大組織になっていた。毎年ヴァロン神父の命日に宴を催し、ネイティブ・アメリカンズの功績を称えていた。アムステルダムはその日に父の復讐を成し遂げると誓った。
ジェニーとの出会い
アムステルダムは、ジョニーと窃盗家業を始め、ビル・ザ・ブッチャーの目に止まり、素性を隠しネイティブ・アメリカンズへ入団する。
アムステルダムは、女スリ師であり泥棒でもあるジェニーと出会った。アムステルダムは少しずつジェニーに惹かれていった。
ニューヨークで発言力を持つ富豪達が視察に来た。そして、ファイブ・ポインツの治安の改善を願った。
タマニー党は治安にも力を入れている事をアピールするため、ビル・ザ・ブッチャーに適当な窃盗犯を捕まえさせて縛り首にした。
夜。慈善のダンスパーティーが開かれた。アムステルダムとジェニーはダンスを踊り接近するが、ジェニーがビル・ザ・ブッチャーの愛人でもあることを知り苦悩した。
やがてアムステルダムは持ち前の才能と度胸で頭角を現し、ネイティブ・アメリカンズのリーダー、ビル・ザ・ブッチャーにも一目置かれる存在へとなっていった。
スコットランド系のビル・ザ・ブッチャーは、続々渡ってくるアイルランド移民を嫌悪していた。
イギリスから独立を勝ち取ったのはスコットランド系の自分達だ。自分達こそ真のアメリカ人だと思っていた。
だが、タマニー党の党首にとって、アイルランド移民は票田にしか見えなかった。
素性がばれる
演劇を観劇していたビル・ザ・ブッチャーが、アイルランド人に銃撃された。弾は運良く急所を外れた。アイルランド人の暗殺者は、雇い主を吐かせようと拷問されて絶命した。
アムステルダムは、アイルランド人の同胞の死を隠れて悲しんだ。そこに一人の男が近付いてきた。父である神父が死んだ戦いにいたモンクだ。モンクは無様に死んで行く同胞を見殺しにしたアムステルダムを叱り飛ばした。
ビル・ザ・ブッチャーの無事を祝う宴の夜。アムステルダムとジェニーは抱き合った。
目を覚ますとアメリカ国旗をまとったビル・ザ・ブッチャーがいた。ビル・ザ・ブッチャーはヴァロン神父の雄姿を賞賛していた。そして、アムステルダムを息子のように思い始めていることを吐露した。
ジェニーの事で嫉妬したジョニーがビル・ザ・ブッチャーにアムステルダムの素性をばらした。
宴の後、ヴァロン神父への献杯に火酒を飲み干そうとするビル・ザ・ブッチャーに、アムステルダムはナイフを投げたが、かわされ、逆にナイフを腹に投げ込まれた。
アムステルダムはビル・ザ・ブッチャーから正々堂々と戦えと罵られ、焼けたナイフで顔に烙印を押されて、路上に放り出された。
デッド・ラビッツ
重傷のアムステルダムをジェニーが看病した。隠れている教会地下にモンクがやってきた。モンクはヴァロン神父が死んだ際に用心棒の代金として抜き取ったものを見せた。ヴァロン神父がわざと血を付けたかみそりだった。
アムステルダムは、ファイブ・ポインツの広場に死んだウサギを下げ、デッド・ラビッツの再結成を宣言した。
ビル・ザ・ブッチャーは怒り、かつてデッド・ラビッツの一員だった警官にアムステルダム殺しを命じた。
教会の再建が始まった。新生デッド・ラビッツの拠点になった、
ネイティブ・アメリカンズとデッド・ラビッツの緊張が高ってきた。そうした中、タマニー党がデッド・ラビッツに近付いてきた。アムステルダムにアイルランド移民の票の取りまとめ依頼しに来たのだ。
アムステルダムは条件として新しい保安官にモンクを選ぶよう条件を出した。タマニー党は選挙でのバックアップを約束した。
結果はブッチャーの推薦する候補を破り、モンクが保安官に当選した。ビル・ザ・ブッチャーは怒り、モンクを自らの手で殺害してしまった。
アムステルダムはブッチャーとネイティブ・アメリカンズに戦いを宣言した。
決着
世間では徴兵制が始まろうとしていた。南北戦争で多くの戦死者を出し、その補充の為に移民を片っ端から徴兵しようというのだ。
だが、富裕層は金で徴兵を逃れている。移民達の不平不満が爆発し、徴兵を拒否する市民が暴徒と化して金持ちの家を始め市内各所を襲い始めた、
そうした中、デッド・ラビッツとネイティブ・アメリカンズの戦いが始まろうとしていた。
暴徒化する市民を鎮圧するための軍隊は、デッド・ラビッツもネイティブ・アメリカンズの戦いにも手を出してきた。海軍も艦砲射撃を始め、街は大混乱に陥った。艦砲射撃はアムステルダムとビル・ザ・ブッチャーに重傷を負わせた。
映画情報(題名・監督・俳優など)
ギャング・オブ・ニューヨーク
(2001年)
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ジェイ・コックス,ケネス・ロナーガン,スティーヴン・ザイリアン
音楽:エルマー・バーンスタイン,ハワード・ショア
主題歌:U2『The Hands That Built America』
出演:
アムステルダム・ヴァロン/レオナルド・ディカプリオ
ジェニー・エヴァディーン/キャメロン・ディアス
ビル・ザ・ブッチャー/ダニエル・デイ=ルイス
ウィリアム・トゥイード/ジム・ブロードベント
ヴァロン神父/リーアム・ニーソン
ジョニー/ヘンリー・トーマス
モンク/ブレンダン・グリーソン
ジャック/ジョン・C・ライリー
マックグロイン/ゲイリー・ルイス
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