この作品までは端役だけだったオードリー・ヘプバーンが一気にトップ女優となった作品です。
1953年度のアカデミー賞において、アカデミー最優秀主演女優賞を受賞。翌年には「麗しのサブリナ」で主演を務めました。
最初の監督はフランク・キャプラで、ヒロインはエリザベス・テイラーだったそうですが、監督の条件が折り合わず、かわりの監督になったのがウィリアム・ワイラーでした。
ウィリアム・ワイラーは自由にキャスティングできることを条件に監督を引き受けたそうです。この時に、ヒロインはジーン・シモンズなどがあがったらしいです。
ヒロインがなかなか決まらず、何人かの志願者の中にオードリー・ヘプバーンがいました。
オードリー・ヘプバーンは当時無名に近い存在でした。それまで端役ばかりだったこともあり、体型も女優としては痩せすぎだったためのようです。
ですが、スクリーンテストのフィルムを見てウィリアム・ワイラーが抜擢することを決めたそうです。
スクリーンテストが終了したときに見せたオードリー・ヘプバーンの飛びきりの笑顔に魅了されたのでした。
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ローマのロケ地
さて、この映画の魅力はオードリー・ヘプバーンだけでなく、舞台となったローマにもあります。
この映画で最も有名なセリフ。「ローマ。何といってもローマです。」
“Rome. By all means, Rome…”
このセリフの通り、何といってもローマが素晴らしいのです。ローマの魅力が前面に押し出され、映画で使われた観光地は少なくとも次の通り。
- フォルム・ロマヌム(セプティミウス凱旋門)
- トレヴィの泉
- スペイン広場
- パンテオン(G.ロッカ)
- コロッセオ
- 真実の口
- サンタンジェロ城
- テヴェレ川
- コロンナ宮殿(2階:勝利の柱の部屋)
- バルベリーニ宮殿(現国立絵画館、クアットロ・ファンターネ通りに面した門)
- ヌオーヴァ教会修道院時計塔
- トラヤヌスの記念柱
- ヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂
- ヴェネツィア広場
- ボッカ・ディ・レオーネ通り(青空市場)
- ポポロ広場
- サンタ・マリア・イン・モンテサント教会
- サンタ・マリア・イン・ミラーコリ教会
- ポポロ門(フラミニオ門)
- 共和国広場
- サンタ・マリア・イン・コスメディン教会
- フォルトゥーナの神殿
- サン・ピエトロ大聖堂
- パラッツォ・ブランカッチョ(現国立オリエント博物館)
真実の口のシーンの真実
上記の観光地の中で有名なシーンは、コロッセオを背景に二人がスクーターで疾走するシーンと、真実の口のシーンでしょう。
真実の口のシーンは、グレゴリー・ペックのアドリブだというのはあまりにも有名な話です。
本番で真実の口に手を突っ込んで、本当に手を噛みちぎられたように演じたところ、オードリー・ヘプバーンは驚いて本気で叫び声を上げ、素のリアクションを見せたのでした。
映画から生まれたトレンド
この映画ではいくつものトレンドが生まれました。
ショートのヘップバーンカットもその一つです。そして、ヘップバーン・サンダルもそうです。ジェラートが大人気にもなったようです。
偉大な誤訳となった題名の本当の意味
題名の「Roman Holiday」は、本来、野蛮(執念深さ,報復性,中傷など)を特徴とする公の面前での見世物、他人を不快にさせて得られる娯楽、他人を苦しめることによる利得、などの意味があります。
古代ローマ帝国で、剣闘士を戦わせる見世物があり、ローマ人は娯楽として休日に観戦していた故事によるものです。
ようするに、アン王女という見世物を楽しむという、ゴシップ的な意味合いのタイトルなのですが、語源となったローマを舞台にした点がこの映画の諧謔性でしょう。
なお、「Roman Holiday」を「ローマの休日」と訳したのは、偉大なる誤訳、とされています。
あらすじ/ストーリー
ローマに到着したアン王女
ヨーロッパの古い王室の王位継承者であるアン王女は、ヨーロッパ各地を表敬訪問していた。
ロンドン、パリの日程をこなし、ローマに到着した。
ローマでは、駐在大使主催の歓迎舞踏会に出席して、寝室に戻った。
翌日の分刻みのスケジュールを告げられ、アン王女はうんざりして癇癪を起した。
強行軍にもかかわらず、精力的に任務をこなしていた王女だが、内心では不満がたまっていたのだ。
夜のローマ
主治医に鎮静剤を注射されて、眠りについたと思われたが、侍従たちが部屋から出て行ったのを確認すると、宿舎の宮殿をひそかに脱出した。
一人で夜のローマをぶらぶらしていたが、やがて鎮静剤が効いてきて、道ばたのベンチで寝てしまった。
新聞記者ジョー・ブラドリーとの出会い
そこを通りかかったのが、アメリカ人の新聞記者ジョー・ブラドリーだった。
翌日、アン王女のインタビューをする仕事が待っている。
若い娘がベンチに寝ているのを見て、何とか家に帰そうとするが、アンの意識は朦朧としていて埒があかない。
彼女をそのまま放っておくこともできず、仕方がないが、ジョーは彼女を自分のアパートへ連れて帰って泊らせた。
行方不明のアン王女
翌朝。ジョーは寝過してしまった。アン王女の記者会見には間に合わなかった。アンを部屋に残したまま、新聞社へ向かった。
ジョーはアン王女のインタビューを聞いたという嘘を話すが、支局長からアン王女は急病で、記者会見は中止したのだと、聞かされた。
その中止記事に載っていた写真を見てジョーは昨晩の娘の正体がアン王女だということに気づいた。これは特ダネのチャンスだ。
ジョーはアン王女がまだ自分の部屋にいることを確認し、誰も近づけないようにしてから、ジョーは支局長に強気の提案をした。
アン王女からスクープ記事が取れたら、いくらで買い取るか?
ジョーのアパートで目を覚ましたアンは、事態を飲み込めなかった。
だが、戻らないと行けない。ジョーに礼を述べて、部屋を出て行った。
ジョーはひっそりとアンの後ろをつけて行った。
ローマの散歩を楽しむアン王女
アンはワクワクしていた。すぐには宮殿にもどらず、街をのんびりと散策した。ジョーに借りたお金で、サンダルを買い、ヘアサロンで髪型をショートにした。
そして、スペイン広場でジェラートを食べた。そこにジョーが現れた。ジョーは偶然を装って、アンに思いきって1日楽しむことを提案した。
ジョーはスクープに必要な写真を撮ってもらうため、同僚のカメラマン、アービング・ラドビッチを誘った。
アービングはアンの正体にすぐに気がついたが、スクープ記事を狙っているジョーはアービングに言い含めて、気がつかないふりをさせた。
そして3人のローマ観光が始まった。
オープンカフェでは初めてのタバコをすい、スクーターに二人で乗って走った。真実の口、祈りの壁、数々の名所を訪ねた。
サンタンジェロの船上パーティー
そして、夜。3人はサンタンジェロの船上パーティーに参加した
だが、会場にアン王女を捜しにきた情報部員たちが現れた。
連れ戻されるのを嫌がったアンは情報部員相手に大乱闘を繰り広げ、川へ飛び込んだ。
ジョーとアンは互いを強く意識し始めていたが、アンは宮殿へ戻った。
ジョーは彼女との思い出を決して記事にはしないと決意した。
そうと知ったアービングはとても残念がった。こんなに素晴らしい写真がいくつもあり、スクープ確実なのに…。
宮殿での記者会見
翌日、宮殿でアン王女の記者会見が開かれた。
アービングは撮影した写真がすべて入った封筒を、王女にそっと渡した。
アンはローマは永遠に忘れ得ぬ街となるでしょうと語って、去っていった。
映画情報(題名・監督・俳優など)
ローマの休日
(1953年)
監督:ウィリアム・ワイラー
製作:ウィリアム・ワイラー
原案:ダルトン・トランボ
脚本:イアン・マクレラン・ハンター,ジョン・ダイトン,ダルトン・トランボ
音楽:ジョルジュ・オーリック
出演:
アン王女/オードリー・ヘプバーン
ジョー・ブラッドレー/グレゴリー・ペック
アーヴィング/エディ・アルバート
将軍/テュリオ・カルミナティ
美容師/パオロ・カルリーニ
ブラッドレーの上司/ハートリー・パワー
ヴィアバーグ伯爵婦人/マーガレット・ローリングス
大使/ハーコート・ウィリアムズ
映画賞など
アカデミー賞
- アカデミー最優秀主演女優賞/オードリー・ヘプバーン
- 最優秀衣裳デザイン賞/イーディス・ヘッド
- 最優秀原案賞/イアン・マクレラン・ハンター