本作は元々、劇団☆新感線の「いのうえ歌舞伎」と呼ばれるシリーズの演目名です。
サブタイトルまで含めた正式な名称は「阿修羅城の瞳 BLOOD GETS IN YOUR EYES」。
かずき悠大(現、中島かずき)作。これまでに3度上演されていますが、全ていのうえひでのりによる演出です。
圧倒的なスピード感とエンタテインメント性で、伝統的な商業演劇に新風を吹き込んだ作品です。
2000年夏、松竹と劇団☆新感線の初コラボレート作品として上演されました。
たちまち演劇ファンをうならせ、2003年に再演。演劇界に名を残す秀作として称賛されました。
その映画化作品です。
感想/コメント
オリジナルの演劇を見たことがないので、どの程度オリジナルと異なっているのかが分かりません。
ですが、個人的には、いまいちの映画でした。
伝奇ものなのか、妖伝ものなのか、はたまたSFとして捕らえてよいのか分からないのです。
それに、登場人物の中には、四世鶴屋南北のように、その存在意義が今ひとつ分かりかねるのもいます。
また、今ひとつ興に乗らなかったのは、音楽です。
どうして、こうも映画の雰囲気と違う音楽を持ってくるのでしょうか?不思議でしょうがありません。
映画とのタイアップで音楽を売り出そうという発想自体が古いというのが分かっていないのではないかと思ってしまいます。
そもそも、タイアップねらいの音楽を選曲しているとしても、この映画の音楽が売れないのは目に見えているはずです。それが分からなかったのでしょうか?
エンディングにスティングを持ってくるセンスもひどいです。
映画はオペラ/演劇などと並んで総合芸術だと思っています。
原作/脚本、舞台装置/セット、衣装、音楽、役者の演技などのそれぞれが一定以上のレベルにあり、さらに、それぞれが上手く組み合わさってこそ面白みがでるものだと思うのです。
どれかが欠けると、その映画の面白みが半減することは言うまでもありません。
日本の映画はとかく音楽を軽視し、役者頼みの傾向にあるように思います。
これを改善しないと面白い映画ができないことを肝に銘じてもらいたいものです。
役者の名前だけでは映画はヒットしません。
あらすじ/ストーリー/ネタバレ
時は江戸時代。文化文政の江戸の町。
この町には、人の姿を借りた魔物も潜んでいた。人を喰らい、人の世を滅ぼそうとするその者たちを人々は鬼と呼んでいた。
幕府は、鬼退治を専門とする「鬼御門」という組織を結成し、頭領・国成延行(内藤剛志)と、その腹心・安倍邪空(渡部篤郎)を中心に、鬼を斬り倒していた。
その国成たちの前に、鬼を率いる尼僧姿の美惨(樋口可南子)が現れる。
美惨は、まもなく鬼の王・阿修羅が復活し、鬼がこの世を支配すると告げるという。
病葉出門(市川染五郎)は、そんな鬼が暗躍する江戸の町で、浮世を楽しむ人気の舞台役者。彼もまた、かつては「鬼御門」の一員で「鬼殺しの出門」と怖れられていた。
だが、五年前のある事件を境にそれまでの一切を捨て、四世鶴屋南北(小日向文世)の一座へ入った。
江戸の町は「闇のつばき」の噂で持ちきりだった。盗みはするが、決して人を傷つけず、一輪の椿を残していく盗賊団。彼らの表の顔は曲芸を披露する渡り巫女だ。
その中の一人の女の名をつばき(宮沢りえ)といった。五年前、川辺に倒れているところを助けられたのだが、それ以前の記憶をなくしていた。
そのつばきと出逢った出門は、彼女に魅了され恋に落ちる。つばきもまた出門に惹かれるが、その時、彼女の肩に紅の花のような痣(あざ)が現れる。
出門に惹かれれば惹かれるほど、激痛とともに広がっていく痣。それこそ、鬼の王・阿修羅の印だった。
安倍邪空は、阿修羅のもつ強大な権力を欲し、頭領・国成を殺して、美惨と手を組んだ。つばきの肩に阿修羅の印を見た美惨は、阿修羅復活へ向けて、安倍邪空をつばきのもとへと送り込む。
つばきを執拗に追う安倍邪空と病葉出門は、つばきをめぐり壮絶な死闘を繰り広げていく。彼女の正体を知ってもなお、つばきを愛する出門と、その愛を受け入れるつばき。やがて、二人の愛が頂点に達した時、つばきの身体に異変が起き始める。
映画情報(題名・監督・俳優など)
阿修羅城の瞳
2005
監督:滝田洋二郎
アクション監督:諸鍛冶裕太
プロデュース:宮島秀司
企画:宮島秀司
脚本:戸田山雅司/川口晴
撮影:柳島克己
視覚効果:松本肇
美術:林田裕至
編集:冨田伸子
音楽:菅野よう子
エンディングテーマ:スティング「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」
衣裳デザイン:竹田団吾
照明:長田達也
特殊造型:原口智生
録音:小野寺修
原作:中島かずき(劇団☆新感線)
出演:
病葉出門/七代目市川染五郎
つばき/宮沢りえ
安倍邪空/渡部篤郎
美修/樋口可南子
四世鶴屋南北/小日向文世
国成延行/内藤剛志
谷地/沢尻エリカ
花魁/土屋久美子
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