感想/コメント
原作に忠実な映画です。
ですが、原作のイメージを表現しきれているかというと、そうでもありません。
さりとて、悪い個所はここ!というのもありません。
映像は丁寧に撮っています。情景も美しいです。音楽も悪くありません。
キャスティングは好みの問題ですが、役者の演技も悪くありません。脚本も悪くありません。
個別の場面場面は悪くないのですが、全体にならしてしまうと、平凡なものになっている印象です。
さて、東山紀之さんは藤沢作品の映画で二本目の主演です。時代劇が似合っています。
個人的には、前作の「山桜」の方が、地味ですが、好きです。
原作の紹介は「時代小説県歴史小説村」で。藤沢周平「小川の辺」をご参照ください。「闇の穴」に収録されています。
映画化された藤沢周平作品
あらすじ/ストーリー/ネタバレ
戌井朔之助が月番家老の助川権之丞から呼ばれて執務室で聞かされたのは予想通りのことだった。
いま藩では脱藩した佐久間森衛に討手を出している。佐久間は脱藩するときに妻を同行した。子はいない。佐久間の嫁は朔之助の妹・田鶴である。
そして朔之助が言い渡されたのは、佐久間森衛を討てというものだった。
朔之助は絶句して、一度は断った。だが、佐久間を討てるものは朔之助を置いてほかにはいなかった。
藩としては背に腹は代えられぬということだった。
田鶴は気が強く、そのため佐久間を討とうとする時に兄の朔之助に刃向かう可能性がある。
朔之助は母・以瀬に田鶴を連れ帰るつもりだと告げたが、父・忠左衛門はもし手向かってきたら斬れと、きっぱり言った。田鶴は母の溺愛を受けて育ってきた。
以瀬は忠左衛門に、朔之助と田鶴に剣術を仕込んだことを詰り始めた。
忠左衛門は朔之助、田鶴の他に若党の新蔵にも剣術を仕込んでいた。
その新蔵が今度の道中の同行を志願した。新蔵は戌井家の奉公人だが、戌井家の屋敷で生まれ、子供のころは朔之助、田鶴と兄弟同様に育った。
年は田鶴より一つ上である。いまも朔之助は新蔵を並の奉公人扱いはしていないつもりである。
朔之助は新蔵を連れて行くことにした。昔から田鶴と新蔵は仲がよかった。そういう点も朔之助は考えたのだ。
朔之助は佐久間に脱藩を勧めたのは田鶴だと思っている。謹慎していた佐久間にさらに重い処分が出ると感じ、勧めたのだと思っている。
それだけ夫婦の結びつきは強いと朔之助は感じていた。だから、田鶴は手向かってくるはず…。
朔之助と新蔵が海坂城下を発った。
佐久間が受けた咎めだが、謹慎するほどのものかという疑問がある。
今年の一月に佐久間は藩主あてに一通の上書を提出した。
佐久間は郡代次席で、その立場から農政の改革を提案したのだ。
上書は藩主・主殿頭を批判したものになったが、目的は政治顧問ともいうべき侍医鹿沢堯伯を退けることにあるのは明白だった。
佐久間の上書は鹿沢を追い詰めることに成功したが、藩主の怒りを買うことになった。
朔之助は佐久間も軽率だと思っていた。今度の一件も直接藩主に提出しなくてもよかったのだ。
だが、そうしたところが佐久間らしいと言えた。
宇都宮で朔之助は新蔵に声をかけた。
朔之助は田鶴と新蔵が喧嘩した姿を見たことがなかった。
朔之助が六歳の新蔵、五歳の田鶴を連れて天神川にいった時のことを思い出していた。
あの時、田鶴が溺れそうになった。田鶴は新蔵のいうことを聞いて、溺れずに済んだ。
あるいは今回も同じかもしれないと朔之助は期待していた。
新蔵は朔之助と佐久間が斬り合う時、田鶴を離れた所に連れていくつもりだった。それが新蔵が同行を求めた理由だった。
田鶴のことは新蔵に任せておけばよいのかもしれない。そう思うと朔之助の気持ちが少し軽くなった。
新河岸で新蔵は佐久間夫婦を見つけた。
田鶴の姿を見て新蔵は田鶴が嫁に入る三日前のことを思い出していた。決して思いだしてはいけない思い出である。
斬り合いは長かったが、朔之助は佐久間を刺した。田鶴がいない間に斬り合いをしたのだ。
だが、終えると田鶴が姿を見せた。そして、朔之助に挑んできた…。
映画情報(題名・監督・俳優など)
小川の辺
(2011年)
監督 / 篠原哲雄
原作 / 藤沢周平『小川の辺』
脚本 / 長谷川康夫、飯田健三郎
撮影 / 柴主高秀
美術 / 金田克美
編集 / 奥原好幸
音楽 / 武部聡志
照明 / 長田達也
装飾 / 大坂和美
録音 / 武進
音楽 / 武部聡志
出演:
戊井朔之助 / 東山紀之
田鶴 / 菊地凛子
新蔵 / 勝地涼
佐久間森衛 / 片岡愛之助
幾久 / 尾野真千子
以瀬 / 松原智恵子
助川権之丞 / 笹野高史
鹿沢堯伯 / 西岡徳馬
戊井忠左衛門 / 藤竜也