感想/コメント
ほぼ原作通り。お見事です。
「隠し剣」シリーズからの映画化です。「花のあと」に続く、豊川悦司主演の「必死剣鳥刺し」。
この映画、殺陣を売りにしています。ラストの15分間に、今までにないくらい壮絶な殺陣を描き切ったと、自画自賛していますが・・・、まぁ、文字通り自画自賛でしかありません。
結局、殺陣がいいかどうかは役者が動けるかどうかにかかっており、それは片方が動けるだけでは話にならないということです。
この映画で豊川悦司という役者が存外動けないということが分かりました。吉川晃司はやはりと言っていいのでしょうが、いい動きをします。
さて、藤沢周平作品の映画化はかなりされていますが、一つの短編を膨らますのにはかなり限界があるような気がしてなりません。
できれば、複数の短編を組み合わせて、「たそがれ清兵衛」のような映画を作ってほしいと思います。
原作は「時代小説県歴史小説村」で紹介しています。「隠し剣孤影抄」に収録されている「必死剣 鳥刺し」です。
撮影場所は茨城・神奈川のほか、藤沢周平氏の地元・山形でも行われました。鶴岡市では旧風間家住宅丙申堂や庄内映画村オープンセットが使用されているとのことです。
他の共演者は池脇千鶴、吉川晃司、戸田菜穂、小日向文世、岸部一徳ら。監督は「愛を乞う人」の平山秀幸。
映画化された藤沢周平作品
あらすじ/ストーリー/ネタバレ
能の舞台。それが終わった後に事件が起きた。
兼見三左ェ門が刺した愛妾は連子という名だった。それが政治に興味を持ち、藩政に影響を及ぼし始めてしまった。やがて明白な失政が表面に出てきた。
だが、誰も藩主に苦言を言おうとしなかった。例外は家老の帯屋隼人正だった。帯屋は別家と尊称される家柄で、藩主家とは血縁でつながっている。
三左ェ門が連子を刺殺したのはこうした時期だった。
三左ェ門は極刑を覚悟していた。だが、もたらされた処分は意外に寛大だった。意外ではすまない、どこか腑に落ちない気分が残った。
役を解かれ無役となり、禄を削られて逼塞同様の暮らしをしていた。その暮らしを支えてくれたのは、亡き妻の姪・里尾であった。一度嫁いだが不縁になって戻ってきた娘だ。二十六になっている。
謹慎が解かれた兼見三左ェ門が近習頭取に挙げられた。中老の津田民部の後押しがあったという。
職場は三左ェ門にとって居心地のいいものではなかった。右京大夫の態度にどこか底冷たいものが感じられたことがあった。そして、それは態度になって現れもしていた…。
三左ェ門はいつでも近習頭取を辞めてもいいと思っている。だが、津田はいよいよ三左ェ門でなければ近習頭取は務まらない事情がはっきりしてきたという。
三左ェ門は天心独名流の達人である。それを津田は知っていた。そして、鳥刺しという必勝の剣があると聞いた、という。三左ェ門は口に運びかけた盃をおいた。
確かにある。だが、流儀の秘伝ではなく、三左ェ門が工夫し、かりに名付けた剣である。今まで誰も見たことのない剣である。
津田は詳しく調べていた。鳥刺しが別名で必死剣というのだが、その意味がわからないというのだ。
それは、絶体絶命の時にしか使わないから、そう名付けたと三左ェ門はいった。つまり、剣を遣うときは、半ば死んでいるときである。
これを聞いた津田は、ある人物が藩主・右京大夫を襲うかもしれない心配があるという。だから、その剣を役立てろというのだ。相手は直心流の名手、つまりは帯屋隼人正だった。
里尾に縁談が来ていたが、三左ェ門は里尾から返事を聞いていなかった。望外の良縁と言える。
三左ェ門は里尾がいたおかげで、生活の不自由を覚えたことがなかったが、里尾の婚期を考えると胸が痛んだ。だが、里尾は嫁に行かないという…。
翌日、三左ェ門は里尾を鶴羽村の知り合いに預けることにした。
帯屋家は藩主家の血が入っており、不思議なことに帯屋家を継ぐものは、藩主のもっとも痛烈な批判者となってきた。隼人正もそうだった。
三左ェ門は襖の外に異変を感じ、右京大夫にそれを告げた。そして、三左ェ門の前に現れたのは帯屋隼人正だった。
斬りかかってきた隼人正を倒したが、三左ェ門も怪我を負った。事終わったところに津田民部が現れ、三左ェ門が乱心して隼人正を斬ったと言い放った。
三左ェ門はようやくここにいたって、右京大夫が連子を殺された恨みを忘れていないことを知った。
映画情報(題名・監督・俳優など)
必死剣 鳥刺し
(2010年)
監督: 平山秀幸
原作: 藤沢周平『必死剣 鳥刺し』
音楽: EDISON
主題歌: alan『風に向かう花』
出演:
兼見三左エ門 / 豊川悦司
里尾 / 池脇千鶴
帯屋隼人正 / 吉川晃司
睦江 / 戸田菜穂
右京太夫 / 村上淳
連子 / 関めぐみ
多恵 / 山田キヌヲ
矢部孫千代 / 矢島健一
大場兵部 / 油井昌由樹
福井 / つまみ枝豆
光岡 / 俊藤光利
山内 / 村杉蝉之介
安西直弥 / 瀧川鯉昇
権蔵 / 田中聡元
茂吉 / 石山雄大
常吉 / 生津徹
喜助 / 前田健
兼見清蔵 / 外波山文明
兼見伝一郎 / 高橋和也
牧藤兵衛 / 福田転球
はな / 木野花
保科十内 / 小日向文世
津田民部 / 岸部一徳