藤沢周平の「風の果て」を読んだ感想とあらすじ(最高に面白い!)

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★★★

片貝道場の同期五人の辿る数奇な運命。ある者は非業の死を遂げ、ある者は友を斬り運命を変えてしまう。ある者は友と政敵同士になり、権力闘争に巻き込まれていく。そして、ある者は平凡な人生を送る。

物語は軽輩の子である上村隼太が首席家老・桑山又左衛門となったところから始まる。この桑山又左衛門が野瀬市之丞から果し合いを申し込まれ、その果し合いに向かうまでの間に、昔のことを回想するという風に進んでいく。

片貝道場の五人の仲間達の物語と同時に、物語で重要なのが太蔵が原という土地である。広大な土地でありながら、水が引けないがために放置されている場所でもある。

そして、水が引ければ膨大な利益をもたらすことが分かっている土地でもある。それがゆえに、権力者はこの土地に魅せられた。だが、誰もこの土地に水を引くことを得ず、失敗してきた。桑山又左衛門もこの太蔵が原に魅せられた男であり、この太蔵が原によって出世した男でもある。

この太蔵が原がもたらすイメージが本書の大きな流れを作っているので、太蔵が原が初登場するシーンはじっくりと読んで、イメージを膨らますとよいと思う。

個人的には映像化し易い作品の一つだろうと思っている。

内容/あらすじ/ネタバレ

家老の桑山又左衛門のもとに野瀬市之丞から果たし状が届いた。市之丞は娶らず禄を喰まずに、髪に霜を置くに至った野瀬家の厄介叔父である。果たし状を届けに来た野瀬の態度は依然とかわりがなかったという。

又左衛門はようやくに、最後の政敵を屠り、権力を一手に掌握したばかりである。その政変の意味を野瀬なりに考え、その結果果たし状を送りつけてきたのだろう。

野瀬市之丞とは、桑山又左衛門が上村隼太といっていた頃からの付き合いである。二人とも片貝道場の仲間であった。

この片貝道場の仲間には、杉山鹿之助、三矢庄六、寺田一蔵らがいた。この仲間達は、杉山鹿之助が元執政の嫡子というのを別格としても、身分が様々だった。その仲間達と、隼太(桑山又左衛門)は道場での稽古が終わると、杉山鹿之助に付いて楢岡図書の屋敷に行くのを楽しみにしていた。

楢岡図書は杉山鹿之助ら若者が来ると、様々な藩政の話などをして聞かせた。隼太(桑山又左衛門)はそれを聞くのが楽しみであった。その話の中で太蔵が原の開墾の話が隼太(桑山又左衛門)を強く捉えた。藩の財政が苦しい中、太蔵が原が開墾できれば財政を好転させることが出来るという。だが、太蔵が原に水を引く手段がないという。

そうした時を過ごした中で、寺田一蔵が先ずは婿入りをした。だが、この婿入り先の女が後に一蔵の運命を大きく変えていく。また、隼太(桑山又左衛門)にも婿の話が来た。相手は桑山孫助の娘で醜女だという評判である。が、この話を隼太(桑山又左衛門)は断った。

そして、杉山鹿之助が家督を継ぐことになり、楢岡図書の娘を嫁にすることになった。この杉山鹿之助の家督相続は隼太(桑山又左衛門)らとの関係が無くなることを意味していた。杉山鹿之助は藩の名門で、将来は執政に進むであろう家柄。住む世界が違うのだ。一つの時代が終わったのだと隼太(桑山又左衛門)は思った。

杉山鹿之助の祝言が終わってから暫くして隼太(桑山又左衛門)は太蔵が原を訪れた。その太蔵が原で隼太(桑山又左衛門)は桑山孫助と出会う。そして、それが縁で桑山家に婿入りすることになった。

…家老になってからの桑山又左衛門が思い出すのは、野瀬市之丞が変わらざるを得なかった事件である。

桑山家に婿入りしてから二年半ほど経った頃、宮坂一蔵(寺田一蔵)が人を斬って逃げたという。そして、その追っ手に野瀬市之丞が選ばれた。藩では太蔵が原の開墾に着手しはじめ、隼太(桑山又左衛門)をはじめとして藩士が開墾にかり出されているときのことだった。この時の太蔵が原の開墾は失敗に終わったのだが、時を同じくして野瀬市之丞が戻り、宮坂一蔵を討ったという。

…桑山又左衛門はあれ以来野瀬市之丞は変わったと思っていた。その野瀬市之丞が送りつけた果たし状とは別に、又左衛門を狙っているという話がある。それはさきに政変で屠った杉山忠兵衛(杉山鹿之助)が絡んでいるのかと思っていたが、そうではないらしい。その暗殺者の手は現実的に又左衛門を襲ってきた。

この暗殺者の攻撃をかわした又左衛門は、昔から抱いていた野瀬市之丞に対する疑問を思い出した。それは野瀬市之丞が誰かから陰扶持を貰っているという噂である。それは一体誰なのか。それが今回の果たし状と関係があるのか。

本書について

藤沢周平
風の果て
文春文庫 計約五七〇頁
長編
江戸時代

目次

片貝道場
わかれ道
太蔵が原
春の雷
暗闘
町見家
政変
陰の図面
天空の声

登場人物

桑山又左衛門(上村隼太)
青木藤蔵…家士
桑山孫助…郡奉行、義父
満江…妻

上村忠左衛門…実兄
乃布…嫂
ふき…女中

野瀬市之丞
杉山忠兵衛(杉山鹿之助)
藤井庄六(三矢庄六)
宮坂一蔵(寺田一蔵)

楢岡図書…組頭
千加…娘

小黒勝三郎…家老の倅
山岸兵助

羽賀吉十郎…道場の先輩
平井甚五郎…道場の先輩
中根又市…道場の先輩

小谷直記…藩政の黒幕
原口民弥…藩政の黒幕

伊藤万年…羽太屋当主

田口半平…町見家