藤沢周平の「海鳴り」を読んだ感想とあらすじ(面白い!)

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★★☆
「年取って、さびしいと思うことはなかったかね?」「女房のため、生まれてきた子供のため、そして奉公人に不満がないようにと、そんなことで過ぎたのだ。そして、気がついてみると、髪が白くなっていたんだ」、そういう新兵衛に対して、そんなものだろうという益吉。

しかし、新兵衛に襲ってきた感慨は、もっと荒涼とした色合いがあったのだ。

老境が身近に感じられるようになって、戸惑う新兵衛の姿。そして、年を取っていくことに対して、どう対処していけばよいのか分からなくなり、自分の人生の意味を問う新兵衛の姿。現代の多くの人が同じ様な感慨を持つのかも知れない。

その中で自分の人生に意味を与えてくれる人間との出会いは、自分の人生を甦らせるような感覚を与えてくれるのかも知れない。それが異性で、しかも自分の生涯の伴侶だと思えるような人なら尚更なのかも知れない。

老境にさしかかってから見える小さな希望が、この作品にはある。だが、それでも、この作品からは老境の悲哀が消え去ることはない。だからこそ、素晴らしい作品であると思う。

内容/あらすじ/ネタバレ

紙問屋の主人達が寄合いを終えて店を出て、駕籠を待っている。小野屋新兵衛もその一人だった。ぼんやりと待っていると塙屋彦助に声をかけられた。彦助は完全に出来上がっていた。それを振り切って、新兵衛は駕籠にも乗らずに徒歩で帰ることにした。

その帰り道。新兵衛は自分に降りかかる老いの兆候を考えていた。ある時期を境にして自分は老いの方に身を置いてしまった感覚がある。それに気が付いたときに新兵衛は女遊びに走った。だが、それもいい加減なものだったと今では思っている。女遊びのあとに残ったのは家の中の暗い不和だけだった。

物思いにふけっていると、地面にうずくまった女を見つけた。丸子屋のおかみおこうだった。悪酔いしたらしい。新兵衛はおこうを駕籠に乗せようと思ったが駕籠は見えない。仕方ないので、どこかで休ませようと思った。新兵衛が思いついたのは近くにある連れ込み宿のような店だった。

仕方のないこととはいえ、おこうを連れ込み宿に連れてきたのは異常なことだった。新兵衛は気が付いたおこうに、事情を詳しく説明した。そして、今夜のことは他言しないようにと念を押した。

疲れて帰ってきた新兵衛は、息子の幸助が夜遊びで家にいないことを知り憤慨する。幸助はまだ十九である。こんな年で女遊びにはまっていては先行きが思いやられる。翌日説教をしたが、効き目はなかった。

紙問屋の仲間内では、大店を中心にしてある画策がされようとしていた。それは問屋が儲かり、中間にいる漉家や仲買いを殺すことになるような事柄だった。それについて、昔からの馴染みの鶴来屋益吉と話していた。

話が一通り終わると益吉は、自分の女房について新兵衛に聞いてきた。益吉の女房・おたねは遊びが激しすぎるのだ。その遊びには男漁りも含まれているから始末に負えない。新兵衛は益吉も大変だろうにと同情する。

その後。新兵衛が用事で外に出たときのこと。丸子屋のおかみおこうと久しぶりに出会った。あのとき以来だったが、あの日に塙屋彦助に見られたという。新兵衛はよりによって悪い男に見つかったものだと思った。果たして詳しく聞いてみると、塙屋彦助は脅しをかけてきた。
新兵衛は塙屋彦助とのことは自分がけりを付けるからと、おこうを安心させた。

そのころ、商売の方は抜き差しならない状況になってきていた。小野屋の得意先を森田屋や須川屋といった大店に奪われ始めていたのだ。それも、どうも新兵衛だけが狙い撃ちされている節がある。一体なぜ?

その一方で、新兵衛は塙屋彦助とのことは金で始末を付けた。だが、この一連のことで度々おこうと会っている内に新兵衛の中には別の気持ちが芽生えていた。

本書について

藤沢周平
海鳴り
文春文庫 計約六〇五頁
江戸時代

目次

白い胸
闇の冷え
見えない壁
日の翳り
崩れる音
夜の道
取引
暗い火花
狙い撃ち
凝視
仄かな光
裏切り
おたね
火の花
遠い稲妻
秋の声
破滅
野の光景

登場人物

小野屋新兵衛…紙問屋
おたき…女房
幸助…息子
おいと…娘
喜八…番頭
倉吉…手代
 
おこう…丸子屋のおかみ
丸子屋由之助…紙問屋
長兵衛…仲買い
 
兼蔵…仲買い
 
塙屋彦助…紙問屋
 
須川屋嘉助…紙問屋
 
山科屋宗右衛門…紙問屋
佐太郎…山科屋の跡取り
 
鶴来屋益吉…紙問屋
おたね…鶴来屋おかみ
 
おみね…つくしのおかみ
庄七…つくしの板前
 
おゆう