[紹介]世界の99%を貧困にする経済:ジョセフ・E・スティグリッツ(徳間書店)[要約]

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レントシーキング

アメリカでの格差の拡大は、必然のレベルを超えている。

富は金融関係者や大企業CEOら富裕層に偏り、どうにもならない状況になってしまっている。

そして、彼ら富裕層は、さらに自分たちの都合のよいように、規制を設定、または解除させることで、超過利潤(レント)を得よう活動をしている。

これをレントシーキング(Rent seeking)という。

このレントシーキングを一つのキーワードにして本書は進められていく。

2012年7月31日第1刷

目次

日本の読者へ 日本人は繁栄を幅広く共有できたのか

序 困窮から脱け出せないシステム
 市場の機能不全
 グローバル化のツケ
 不平等と不公平
 ヨーロッパより階級格差が大きいアメリカ
 モラルの喪失
 政治制度の機能不全
 抗議者たちが求めているもの
 希望の道はあるのか
 本書を読むうえでの注意
 経済学の使命

第1章 1%の上位が99%の下位から富を吸い上げる
 すべての船を浮揚させられない上げ潮
 トリクルダウン(おこぼれ)効果はなかった
 アメリカの不平等の概況
 労働力の二極化
 大不況は苦しい生活をさらに苦しくした
 セーフティネットなき労働市場
 三重の不幸
 生活水準の低下
 150万世帯が極貧
 不平等な機会
 上流階層はパイの大きな分け前を手にする
 国際比較
 ジニ係数
 まとめ

第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方
 ガチョウの羽むしり
 アダム・スミスの”見えざる手”と不平等
 市場を都合よく形作る
 ピラミッドの下から上へ金を移動させる
 さまざまなレントシーキング
 独占されていく市場
 <マイクロソフト>の長期支配
 認知の取り込み
 企業に気前のいい政府

第3章 政治と私欲がゆがめた市場
 経済構造の大変化
 グローバル化が格差を広げた
 金融の自由化がもたらしたもの
 貿易のグローバル化がGDPを押し下げる
 労働者を保護せよ
 コーポレート・レントの不公正な配分
 暗黙の差別
 世襲される富
 分離する地域社会
 どこまでが一個人の稼ぎか?
 二つの立場
 不平等の源を解析する
 まとめ

第4章 アメリカ経済は長期低迷する
 消費の冷え込み
 政府の対応がバブルと経済の不安定化を招く
 規制緩和の罪
 高水準の不平等は経済の効率性と生産性を低下させる
 富裕層は公共投資を望まない
 機会均等の終焉
 レントシーキング経済
 効率賃金説と疎外感
 消費で見栄を張り合う
 不平等と効率性のトレードオフ仮説
 奨励給の副作用
 累進課税強化をはばんだもの
 まとめ

第5章 危機にさらされる民主主義
 投票のパラドックスと有権者の幻滅
 信頼の低下
 金持ちを利する経済
 マスコミへの不信
 選挙権の剥奪
 影響力の剥奪
 なぜ懸念すべきなのか?
 政治プロセスの改革
 民主主義の空洞化
 グローバル化と不平等と民主主義
 アメリカの影響力の縮小
 まとめ

第6章 大衆の認識はどのように操作されるか
 現代心理学と経済学の基礎
 不平等の政治学
 思想の進化
 政策についての認識のつくられ方
 戦いの道具
 認識をめぐる戦いとしての政策をめぐる戦い
 政府の失敗 vs 市場の失敗
 自由化と民営化
 イノベーションと規制への抵抗
 三つの戦い
 ルービンが抵抗した企業助成の削減
 IMFという”裸の王様”
 GDPは誤った尺度
 まとめ

第7章 お金を払える人々のための”正義”
 なぜ法の支配が必要なのか?
 略奪的貸付
 破産法
 食いものにされた学資ローンプログラム
 マイクロクレジットの悲劇
 抵当流れ詐欺
 ”事実上の” vs “法律上の”
 証券取引委員会と証券詐欺
 まとめ

第8章 緊縮財政という名の神話
 赤字の歴史
 一石三鳥
 赤字予算と需要不足の時代に経済を刺激する
 ギリシャ危機の余波
 ユーロの敗因
 赤字削減路線の正体を暴く
 所得控除
 経済をゆがめる神話
 社会保障を縮小するな
 メディケア
 犠牲者をムチ打つ
 緊縮財政はうまくいかない
 景気刺激策の失敗
 なぜ政府支出がきわめて効果的でありうるのか
 まとめ

第9章 上位1%による上位1%のためのマクロ経済政策と中央銀行
 現代のマクロ経済学と通貨政策がどのようにして下位99%を痛めつけたか
 FRBは富の配分を気にもとめない
 大銀行への贈り物
 経済の金融化
 もっと民主的な中央銀行へ
 囚われの身
 民主主義への信念の欠如
 ユーロ圏の深刻さ
 通貨政策と思想の戦い
 インフレ・ターゲット論の怪しい土台
 他人に恵みを与える
 妥協はしない
 まとめ

第10章 ゆがみのない世界への指針
 経済政策の七つの基本方針
 税制改革
 富裕層以外の人々を支援する
 グローバル化の緩和
 完全雇用の回復と維持
 新たな社会契約
 持続可能かつ公平な成長を取り戻す
 喫緊の課題
 政治政策方針
 希望はあるのか?

1パーセントの1パーセントによる1パーセントのための政治

アメリカ国内では法外なまでに不平等が広がっており、少数の富裕層に不釣り合いなほど大きな発言言を与えているとみられる政治制度が構築されてきている。

世界では3つのテーマが共鳴している

1.市場が本来の機能を果たさず、効率性と安定性を欠いている
2.政治制度が市場の失敗を是正してこなかった
3.政治・経済制度が基本的に不公正である
 ▼
不平等は政治制度の失敗の原因でもあり、結果でもある

不平等は経済制度の安定性をそこね、不安定性は平等性をそこね、悪循環はわれわれの生活を地盤沈下させていく

緊縮財政

大不況とともに、政府の歳入は激減し、国家の赤字と債務が急増した。

その結果、手段として緊縮財政が行われることになった。
 ▼
赤字削減を考える際に忘れてはいけないのは、不況が赤字を生み出したのであって、逆ではないということである

緊縮財政を進めると、経済の下押しを悪化させるだけであり、期待されている財政状況の改善は生まれてこないだろう

税制を公平なものにするのも改革の一つである

投機家が課せられる税金は、生活のために働く普通の人々に比べるとわずかな割合でしかない。

経済学の基本理論では賃料(レント)に課税するのは極めて効率的だとされる

また、基本原則では、いいものよりも悪いものに税金を課す方がよいとされている。仕事に税金を課すことに比べたら、汚染に税金を課す方がよい。

もし

真剣に赤字を削減しようと思うなら、次の方法がよい
1.最上層に属する人々の税率を上げる
2.最上層に偏っている種類の収入に対する抜け穴や特別待遇を排除する
  投機による収入や配当への低い税率など
3.企業に補助金を与えることになる個人税制と法人税制の抜け穴や特別条項を排除
4.レントに今より高率の税金を課す
5.汚染に税金を課す
6.金融セクターに課税し、少なくとも経済全体に繰り返し押し付けてきたコストの一部を反映させること
7.国の資源を利用ないし不当に使用することになった者に対価を全額支払させる

インフレ・ターゲット論の怪しい土台

マネタリズムの基礎には、貨幣の流通速度が一定という仮説がある。

一部の国や一部の場所に限れば、そのとおりだったが、世界経済においては事実ではない。

この理論は中央銀行の理事たちの間で流行したが、数年で根本から疑われるようになり、マネタリズムを捨て去ると、市場への干渉は最小限にすべきとする教義と矛盾しない新しい信条を探して、見つけ出した。

「インフレ・ターゲット論」である。

怪しげな仮説
1.インフレは究極の悪であるという仮説
2.安定した低いインフレ率を保つことは安定した高い実質成長率を言いするために必要かつ、それだけでじゅうぶんだという仮説
3.インフレ率が低いと全ての人が恩恵を被るという仮説

ケインズの言葉

本書ではケインズの言葉が引用される。「貨幣改革論」にある言葉である。

「長期的に見ると、われわれはみな死んでしまう。」

マクロ、ミクロに限らず経済理論が、「長期」「短期」の時間軸、需給など、あらゆる仮定・前提が無限大をベースに組み立てられている。
だが、現実の世界は、時間や需給、その他のあらゆる要素が有限である。

無限大をベースにして「長期的には」「短期的には」と語られても、「われわれはみな死んでしまう。」

経済学の理論的な限界がここにあり、この部分を克服して、有限の中で語ることができるようになれば、本物の実学として世の中の役に立つ学問になるのではないかと思う。